「糠に釘」とは?
「糠に釘」は、「ぬかにくぎ」と読みます。「糠(ぬか)」は、玄米などを精米にするときに出てくる米ぬかのことです。「糠味噌(ぬかみそ)」を略した言葉として使われることもあります。
糠に釘を打っても、刺さらずに抜けてしまって効き目はありません。このことから、「糠に釘」は、何の効き目もない、手ごたえもないことを指します。役に立たない、無駄な努力、ということもできます。
「糠味噌に釘(ぬかみそにくぎ)」という言い方は誤りです。
いろはかるたの「ぬ」
「糠に釘」は、京都やその周辺の地域で親しまれている『上方いろはかるた』の札にも入っていることわざです。ちなみに、江戸かるた、尾張かるたでの「ぬ」の札は、いずれも「盗人の昼寝(ぬすびとのひるね)」です。これは、盗人が昼寝をしているのは意味がなさそうに見えるが、夜に盗みに入るために休んでいるのであって、このことから、意味がなさそうなことでもそれぞれ理由がある、ということを表しています。
「糠に釘」の類義語
「糠に釘」と同じような意味を持つことわざには、次のようなものがあります。
豆腐にかすがい
「かすがい」は、材木と材木とをつないでとめるための、両端の曲がったコの字型の金具のことです。やわらかい豆腐にかすがいを打っても、手ごたえはありません。ここから転じて、何の効き目もないことを指すようになりました。このことわざも、『上方いろはかるた』の札の一つです。
「糠に釘」と混同して、「糠にかすがい」とするのは誤りです。また、次に解説する「のれんに腕押し」と混同して、「豆腐に腕押し」とするのも誤りです。
のれんに腕押し
「のれん」は建物や部屋の入り口に、外と中を分ける仕切りとして掛けてある切れ目の入った布のことです。「腕押し」は、腕相撲のことです。
腕相撲は、競う相手が自分と同じくらいの対抗心や力があるからおもしろいのに、相手がのれんでは全く手ごたえがありません。このことから、何の張り合いも手ごたえもないことを指します。
ただし、このことわざは、「のれんを腕で押すように手ごたえがない」、とそのままの意味で解釈されることもあります。
石に灸
「いしにきゅう」と読みます。石に灸をすえても、コリがほぐれることはありません。このため、何の効果もないことを指します。同様のことわざに、「土に灸(つちにきゅう)」「泥に灸(どろにやいと)」があります。
「糠に釘」英語表現
「糠に釘」を英語で表現したものには、次のようなものがあります。
- Bolt the door with a boiled carrot.(ゆでた人参で戸締りをする。)
- All is lost that is given to a fool.(愚か者に与えられるものはすべて、無駄になる。)
- It is like beating the air.(まるで空気を叩くようだ。)
「糠に釘」例文
- ゲームばかりしている子どもに、宿題をするように何度言っても糠に釘で、言うことなんて聞いてくれない。
- 景気回復のために政府はさまざまな対策をとったが、どれも顕著な効果は見られず、糠に釘となってしまった。
- のどの強くない彼にタバコを止めるように何度も注意したが、いっこうに聞き入れる気配がない。糠に釘だ。
「逝きそうなヒーローと糠に釘男」
シンガーソングライターの阿部真央さんが、2019年1月に初のベストアルバム『阿部真央ベスト』をリリースします。このアルバムに収録される「逝きそうなヒーローと糠に釘男」という歌の歌詞に、「糠に釘男」という言葉が何度か出てきます。
この曲は、2017年2月にリリースされたアルバム『Babe.』の2曲目に収録されていた曲で、疾走感のあるロックナンバーとなっています。