「こだまでしょうか」とは?
「こだまでしょうか」というこの有名な一節は、詩人 金子みすゞの詩のタイトルです。原題は「こだまでせうか」となっています。また、英語では "ARE YOU AN ECHO?" というタイトルで翻訳されています。こだまとは、山や谷で音や声が反響して帰ってくる、いわゆる「山びこ」のことです。以下は、同詩の全文です。
「遊ぼう」っていう。
「馬鹿」っていうと
「馬鹿」っていう。
「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
そうして、あとで
さみしくなって、
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、
いいえ、誰でも。
「こだまでしょうか」より
この詩の各連の二行目のことばは、こだまが返ってくるように、同じ言葉が書き連ねられて一編の詩になっています。目で読んでももちろん素晴らしいのですが、声に出して読むと、まさにこだまが返ってくるような音の響きを体感できます。
著者 金子みすゞとは?
金子みすゞ(本名 テル)は、1903年山口県生まれの詩人です。1930年に26歳の若さでこの世を去るまでに500編を超える多くの素晴らしい詩を残しました。当時の尋常小学校、高等女学校をずっと1番か2番で卒業する優秀な少女でした。女学校を卒業後は、親族が経営する書店を手伝いながら「童謡」という、当時一番新しい形の詩を書いていました。以後「金子みすゞ」のペンネームで5年間の間に90編の作品を投稿し、一躍文学少年少女の憧れの詩人となりました。
私生活では1926年に結婚し一児を授かるものの、夫の放蕩(ほうとう)に苦しめられ1930年に離婚しました。法律や夫の意向の壁に阻まれ娘の親権を得ることができず、同年3月、夫が愛娘を連れにくるその日に服毒により自死し、短い生涯を終えました。
金子みすゞとメディア
詩人 金子みすゞや、「こだまでしょうか」を含む彼女の作品は、メディアに取り上げられることにより、より一層広く親しまれるようになったといえるでしょう。その中から2つの事例をご紹介します。
「こだまでしょうか」とACジャパンのコマーシャル
2011年のユーキャン新語・流行語大賞トップ10に「こだまでしょうか」がノミネートされたことを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。これはこの年に放送されたACジャパンのコマーシャルがきっかけでした。
東日本大震災直後の緊迫状況下で、連日被災者支援の為のテレビ番組が放送されていました。テレビコマーシャルも自粛したり内容を配慮したものを放送する中で、その差し替え用に社団法人ACジャパンが作成したのが、歌手のUA朗読による「こだまでしょうか」でした。やさしく心に響く金子みすゞのことばに心を慰められた方もいたことでしょう。
金子みすゞの詩と歌
もともと彼女の詩は曲をつけることを想定していませんでした。しかし作品が評価されるにつれて曲をつけて多くの歌手が歌い、童謡や合唱曲としても親しまれるようになってきたのです。NHKのEテレの子供向け番組「にほんごであそぼ」では、狂言家の野村萬斎が「大漁」を、番組内の歌として「私と小鳥と鈴と」が歌われています。またみすゞの詩をモチーフにした回も作成されたことがあります。もしかしたら、現代の小さい子供たちは、金子みすゞの詩を、それとは知らずに口ずさんでいるかもしれませんね。
主な詩のタイトル
- 「こだまでしょうか」
- 「大漁」
- 「土」
- 「木」
- 「土と草」
- 「星とたんぽぽ」
- 「私と小鳥と鈴」
- 「夕顔」
- 「不思議」
- 「葉っぱの赤ちゃん」
- 「蜂と神様」
- 「空の鯉」
- 「お日さん、雨さん」
- 「みえない星」
- 「みんなを好きに」
- 「梨の芯」
- 「水と影」
- 「草原の夜」
- 「このみち」
- 「こころ」
「こだまでしょうか」まとめ
短い生涯の間に多くの詩を残した詩人 金子みすゞ。心に響く優しいシンプルなことば使いが魅力の一つではないでしょうか。ぜひ一度詩集を手に取ってみてください。きっと心が癒されますよ。