植物としての「シロツメクサ」
シロツメクサ(白詰草)は、シャジクソウ属の多年草で、葉が「クローバー」という別名で知られる野草の花を指す名前です。一般には春の花とされていますが、実際には春から秋にかけての長い期間開花します。日本でも現在では日常的に目にする代表的な野草のひとつであり、花冠や四つ葉探しなどで遊んだ経験があるかたも多いのではないでしょうか。
毒性はなく、薬としても特別な効能はありません。民間療法として花を乾燥させて煎じたものを飲んだり、茹でて和え物などにして食す地域もあるようです。基本的に無害であり、環境活動・緑化運動の一環として、また雑草や土壌浸食の防止のためとして利用される例も見られます。
意外にもシロツメクサの歴史は比較的浅く、江戸時代の終わりごろから明治時代の初めにかけて欧州からもたらされた外来種であり、家畜の飼料として欧州から輸入したものが帰化し、日本全土に広まっていったと考えられています。シロツメクサという名前も外国由来であり、1846年にオランダから贈られたガラス製品の緩衝材として詰められていたことから取られたとされています。
「シロツメクサ」の花言葉
丸く密集した小さいシロツメクサの花。その花言葉もほとんどがイメージ通りのかわいらしいもので、「私を思って」「約束」「復讐」、四葉の場合は更に「私のものになって」「幸運」、また、色の赤いアカツメクサは「勤勉」となります。
何とも優しげな花言葉の中に、「復讐」と、ひとつだけ怖いものが混ざっていますね。人に贈る際には注意する必要がありそうです。それでは次に、これらの花言葉の由来について調べてみましょう。
「シロツメクサ」の花言葉の由来
花の多くは、その由来となる物語や逸話から連想される複数の言葉を花言葉として持っています。しかしシロツメクサの場合、物語というよりは、生態及び四つ葉の存在からか、古くから「幸運」に関するシンボルとして使われていた国が多いようです。
そこからなぜ「復讐」という言葉が生まれたのでしょうか?一説には、「私を思って・私のものになって」という人の愛情、そして「約束」を蔑ろにするようなことがあれば、愛情や約束は転じて復讐心に変わるだろう、という戒めの意味を篭めためたのではないか、と言われています。
詳細は後述しますが、シロツメクサはキリスト教のシンボルとして使われたこともある花ですから、信仰の一貫としての訓戒、という説にも信憑性がありますね。
キリスト教とシロツメクサ
時は400年代半ば、アイルランドにて、キリスト教の司教聖パトリックが布教活動を行うにあたり、シンボルとしてシロツメクサ(一説にはカタバミとも)を掲げたことが始まりです。当時アイルランドには土着の神話と信仰があり、一神教であるキリスト教の布教は難航したそうです。そこで聖パトリックが目をつけたのが、元々アイルランドで「幸運」の象徴として知られていたシロツメクサでした。
聖パトリックはシロツメクサの葉に注目し、クローバーの三つ葉をキリスト教の教義である「三位一体(父たる神・子たる人・聖霊は元々一体であるという教え)」に見立て、また四つ葉を「十字架」に見立てて布教活動に用い、その結果、アイルランドにキリスト教を広めることに成功したそうです。
シロツメクサの花言葉のひとつ「約束」は、キリスト教の教えに頻出する言葉ですので、これもキリスト教に由来するのではないかという見方もあります。シロツメクサとキリスト教とは、深い繋がりがあったのですね。
アイルランドと「シロツメクサ」
「シロツメクサ」、この場合は正確には、シロツメクサ・カタバミなどを含む三つ葉の野草の総称「シャムロック」となりますが、これらはアイルランドの国花にもなっています。アイルランドではシャムロックは非常に身近な植物であり、「緑の島」「エメラルドグリーンの島」などと称されるアイルランドの自然の象徴とされています。
また、前述の聖パトリックはその後、アイルランドにおけるキリスト教の布教に大きく成功し、聖パトリックの命日は現在に至るまで「聖パトリックの日」という祝日として大事にされており、当日は胸にシャムロックを飾ったり、緑色のものを身に着けて祝う風習があるそうです。