「鶴」とは?
ツル(鶴)は、ツル目・ツル科の鳥の総称です。どの種類もくちばし、首、脚が長く、体長は1mほどになる大型の水鳥です。
生息しているのは、沼地、湿地、平野などです。雑食性で、植物の芽、葉、茎、種子や、ドジョウ、カエル、昆虫などの小動物まで、いろいろなものを食べます。
一般的には地上にわらや小枝などで巣を作り、1~4個の卵を産みます。雌雄交代で抱卵し、30日前後の抱卵でヒナが誕生します。生まれたヒナは、すぐに歩いたり泳いだりすることができますが、飛べるようになるにはしばらく時間がかかります。
日本で見られる鶴
世界に生息する15種類のツルのうち、日本では次の7種類を見ることができます。
タンチョウ
タンチョウは日本で野生で生息している唯一のツルで、季節によって移動をすることがない「留鳥(りゅうちょう、とどめどり)」です。北海道の東部の湿原で繁殖し、冬はほとんどが釧路湿原で越冬します。
漢字で書くと「丹頂(タンチョウ)」ですが、丹は赤い色のことを言います。その名前のとおりの頭頂部の赤と、白と黒の羽毛のコントラストが美しいツルです。
アイヌ民族には、タンチョウの舞う姿をモチーフにした舞踊があります。また、昔話の題材になっていたり、1984年(昭和59年)発行の千円札には裏面にタンチョウが描かれていたりと、日本人にとってなじみの深い鳥です。
ナベヅル、マナヅル
中国東北部からロシアのアムール川流域あたりで繁殖して、山口県周南市や鹿児島県出水市などに渡来して越冬するのがナベヅル、マナヅルです。どちらも国の天然記念物に指定されています。
その他のツル
クロヅル、アネハヅル、ソデグロヅル、カナダヅルの4種類は、ごく稀に、日本に飛来する姿を見ることができます。
鶴の寿命
ツルの寿命は、野性のタンチョウで20~30年程度、動物園などで飼育されていたタンチョウで50~80年程度とされています。ツルの中で一番長生きするカンムリヅルは、平均50~60年生きるそうです。
野生のスズメの寿命が1~3年程度、飼育されているニワトリの寿命が10年程度なので、ツルは鳥の中では長生きであると言えそうです。
鶴は千年亀は万年
「鶴は千年亀は万年(つるはせんねんかめはまんねん)」は、長生きでおめでたいことを祝ったり、縁起の良いときに使ったりすることわざです。
中国では、古くから鶴や亀を長寿の象徴、縁起の良いものとしてきました。中国の前漢の時代(紀元前2世紀ごろ)の哲学書、思想書である『淮南子(えなんじ)』の「巻十七 説林訓(ぜいりんくん)」には、次のような記述がみられます。
これが転じて、語呂が良かったこともあり、「鶴は千年亀は万年」となったとされています。
万葉集と鶴
鶴は古くは「たづ」と呼ばれていて、万葉集には約50首「たづ」を詠んだ歌があります。そのうち約20首に「鶴」の字が使われていて、その他、「多津」「多頭」「多豆」「多都」などの字も使われています。ただし、この時代には、コウノトリやハクチョウなども含んで「たづ」と呼んでいたようです。
(若の浦に潮が満ちてきて干潟が見えなくなり、葦の生えているほとりに向かって鶴が鳴きながら渡っていくよ)
山部赤人
吉祥文様と鶴
ツルは、おめでたい席に着る着物などの模様にもよく使われている吉祥文様(きっしょうもんよう)の一つです。
吉祥文様は、縁起が良くおめでたいとされる動植物や物などを描いた文様を言います。祝意を表すため、花嫁衣裳、振袖、赤ちゃんのお宮参りや七五三の着物などのほか、調度品などにも使われています。
中国から影響を受けているものや、日本で縁起が良いとされているものなど、さまざまなものが描かれています。松、鳳凰(ほうおう)、扇、菊、藤なども吉祥文様に挙げられます。
鶴亀の文様は、「鶴は千年、亀は万年」を表し、長寿の象徴です。鶴二羽で夫婦鶴(めおとづる)としても用いられ、夫婦の幸せや繁栄を表しています。