「百合」とは?
「百合」は「ゆり」と読みます。ユリ目ユリ科のうち、主とユリ属に分類される多年草の総称です。山や野原に自生しますが、観賞用にも栽培されています。つりがね型の花と、笹に似た形の葉が特徴です。
「ユリの花びらは6枚」とされることもありますが、厳密には3枚です。花びらと間違われがちですが、実は同じ色の「がく」で、こちらも3枚あります。
養分を蓄える「鱗茎(りんけい)」は、一般には「百合根(ゆりね)」と呼ばれ、食用としてもよく知られていますね。
植物としての「百合」
名前の由来
ユリは細い茎に比して大きな花を咲かせるので、風が吹くと大きく揺れます。その様から「揺すり(ゆすり)」と呼ばれていたものが「ゆり」に転じた、という説が有力です。
他にも、「八重括根(やえくくりね)」の略称、花が傾くことから「緩み(ゆるみ)」、鱗茎が重なることから「寄り(より)」、など様々な説が存在します。
花言葉
他の多くの花と同様に、ユリの花も色によってさまざまな花言葉を持ちます。代表的なものをいくつか挙げておきましょう。
- 百合(ユリ)は「純粋」「無垢」
- 白い百合は「純潔」「威厳」
- オレンジの百合は「華麗」「愉快」「軽率」
- ピンクの百合は「虚栄心」
- 黄色の百合は「陽気」「偽り」
- 黒い百合(クロユリ)は「呪い」
さまざまな意味がある中でも、クロユリはなかなかに物騒な花言葉を持っていますね。ちなみに、クロユリは厳密にはいわゆる「ユリ」とは別属の植物です。高山植物の一種で、6月ごろに咲きます。
「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」
「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」は、美しい女性の立ち居振る舞いを花にたとえた言い回しです。それぞれの植物の花のつけ方から、「芍薬」は立ち姿、「牡丹」は座った姿を連想させます。
百合が歩く姿になぞらえられているのは、やはり「揺れるさま」「動くさま」の美しさが人の印象に残るからなのでしょう。
キリスト教における「百合」
キリスト教の聖母マリアへの受胎告知を表現している絵画では、しばしば白い百合の花が描かれます。百合の花は純潔無垢や穢れのなさを象徴する存在で、マリアが処女のまま受胎したことを表しているのです。
元来、キリスト教において百合は薔薇と並んで天国の花とされており、生命や光を象徴する植物とされています。
ジャンルとしての「百合」
「百合」という言葉には、「女性同士の同性愛、およびそれを題材とした各種作品」という意味もあります。
男性同士の同性愛、およびそれを題材とした各種作品が「BL(=ボーイズラブ)」と呼ばれるのに対して、「GL(=ガールズラブ)」とも呼ばれるジャンルです。
ジャンル「百合」の由来
1970年代、男性同性愛者向けの雑誌『薔薇族』の編集長が、男性同性愛者を表す「薔薇族」という言葉の対義語として「百合族」という言葉を使い始めたのが「百合」の語源と言われています。
女性同士の関係は、友情に近いようなライトなものから、恋愛感情で強く結ばれたものまで、幅広く「百合」と称されることが多いでしょう。
ジャンル「百合」の用語
女性同性愛を扱った作品などで見られる用語をいくつか紹介しておきます。
- S(エス) 姉妹を表す英単語sisterの頭文字です。女子校での先輩後輩間の女性同性愛やそれに近い関係を表します。歴史は古く、戦前から女学生の間で隠語的に使われていた言葉です。
- お姉さま 学園物の百合作品で、年下の女子生徒が慕う目上の女子生徒によく使う呼称です。
- スール 姉妹を表す仏単語soeurのカタカナ表記です。百合ジャンルの代表的な作品である『マリア様がみてる』シリーズ内で、上の「S」と同じ意味で用いられています。