「当たり前」の意味
意味は二通りあります。
- 誰が考えてもそうあるべきだと思うこと、当然なこと。常識。
- 普通と変わっていないさま。珍しくない様子。ありふれているさま。
コンパクトな辞書で「当たり前」の項目を見ると「当然なこと」と書いてあり、「当然」の項目を見ると「当たり前であること」とあります。実のところ、説明するのは非常に難しいということでしょう。
「当然」とは、漢文として読み下しをすると「まさにしかるべき」となります。「正しく、その通りでなくてはならない。必ずそうならなくてはならない」という意味に取れます。ただ、「当然」には2の意味がありません。これが語源説が複数に分かれる理由にもなっています。詳しくは後述します。
「当たり前」の使い方
「当たり前」は「当然」よりもくだけた印象を与えるので、日常会話の中で使われるシーンが多いかと思われます。
- 「中学生が自分用のスマホを持っているというのは、もはや当たり前だね」
- 「どんな局面であっても、ごく当たり前のようにこなすのが、プロフェッショナルだよ」
- 「当たり前のことをやっていては、世の中に認められないね」
- 「妊娠・出産は、女性として当たり前のことだ」
4番目はNG例です。個人的な感覚・価値観で「当たり前」を振り回すと、周囲と摩擦を起こしたり、時として時流に逆らうことにもなりかねません。本当に「当たり前」かどうか、発言するときにはよく考えて使用すべきでしょう。
あたりまえポエム
当たり前なのに詩的に聞こえる、それが『あたりまえポエム』です。2017年、氏(うじ)くんのTwitterで作品が発表されて以来、「面白い」「じわる」と評判になりました。その評判が各メディアに瞬く間に広まり、書籍化(朗読CD版もあります)もされました。深い意味を持たせずにつづった言葉が、美しく感動的に聞こえるという、ある種の実験的な言葉遊びです。フォロワーによる新しい『あたりまえポエム』がつくられたり、企業や団体が『あたりまえポエム』風のコピーでPRしたりと、多方面に展開しつつあります。
「当たり前」の語源2説
さて、「当たり前」の語源には複数の説が存在します。いずれも説得力では甲乙つけがたい内容ですが、さて皆さんはどちらがしっくりくるでしょうか?
「当たり前」の驚く語源①
まず、「当然」という言葉が先にありました。同じ「とうぜん」と読む「当前」を当てて使っているうちに、「当前」を訓読みした「当たり前」という言葉が発生したというものです。要は漢字の誤用が「当たり前」の語源だったとする説です。(「同然」と「同前」の関係と同じだとしています。)
「当たり前」の驚く語源②
その昔、漁などの共同労働の収獲を現物で分配していたとき、一人分の分け前を「当たり前」と呼んだとする説です。「当然」に「2ありふれているさま」の意味がない点も、この説の根拠となっています。「当たり前」=一人当たりの分け前であり、共同労働の報酬である以上、その分け前を受け取るのは当然の権利であるというところから、当然の意味となったとしています。
「当たり前」をかっこよく
勢いをつけて…
- あたりきしゃりき こんこんちき・ケツの穴ブリキ・車引きと続けることもあります。バリエーションは時代や地方によって多数存在します。
- あたぼうよ 「あたりめえだ、べらぼうめ!」の省略形と言われています。
政治・ビジネス・生活では
- 当たり前のことを当たり前のようにやる 多くは会社の上司など上に立つ人間が、部下などに対して言います。当たり前=慣習・義務と決めつけると、部下から反発を受けるケースがあります。
- 当たり前の日々(日常) 本当の幸せとはこういうことだ、といった肯定的な文脈で使われます。
「当たり前」を英語では?
これ、というものはなく、言い回しは複数存在します。
- of course (会話の相槌で)もちろんそうだ!
- obviously,exactly (会話の相槌で)その通り!
- no wonder,nobody doubts 疑問の余地なく
- naturally ごく普通に
- nothing special 特別なことではなく