「切磋琢磨」とは?
「切磋琢磨」は、「せっさたくま」と読む四字熟語です。儒教の聖典とされる「四書五経」の1つ、「詩経」に見られる言葉で、以下のような意味を持ちます。
- 学問や人徳をより一層磨き上げること。
- 友人同士が互いに励ましあい、競争しあって共に向上すること。
もともとは、1の意味で使われていた言葉なのですが、現代では2の意味で用いることが主流です。
「切磋琢磨」の字義
「詩経」では、「切(せっ)するが如(ごと)く、磋(さ)するが如く、琢(たく)するが如く、磨(ま)するが如し」と読み下します。それぞれの漢字には、以下のような意味が含まれています。
- 「切」…獣の骨や角などを切り刻むこと。
- 「磋」…玉(ぎょく)や角(象牙)を磨くこと。
- 「琢」…玉や石をのみで削って形を整える。
- 「磨」…石をすり磨くこと。
自己を磨き、学問や道徳などに励むことを、骨、象牙、玉、石などを研磨し、加工することにたとえています。「磋」の代わりに「瑳」の字を用いることもあります。
「切磋琢磨」の使い方
現代において「切磋琢磨」は、互いによい刺激を受けながら、ともに向上していく様子を表す際に使われます。勉強や仕事、競技や芸術など、さまざまなシーンが挙げられますね。「切磋琢磨」することを理想として掲げることもあるでしょう。
ここには、相手を否定したり、見下したりするような、ネガティブなニュアンスはありません。プラスの影響を与え合うことで、それぞれの持つスキルや能力が高められていくのが想像できますね。
以下の例文は、はじめの一つが上記1の意味「自身を磨き上げるための努力」を指す言葉としての用法です。残りの三つの例文では、2の「互いに高めあう」という意味で用いられています。
例文
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愚劣とみたものが、実は切磋琢磨の功を積んで成った虚飾ない真実の姿であるという場合もあり得よう。(石坂洋二郎『若い人』より)
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おれは詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交わって切磋琢磨に努めたりすることをしなかった。(中島敦『山月記』より)
- 高校野球の名門校で出会った二人は、ともに切磋琢磨してチームの不動の四番バッターとエースにまで成長した。
- ときに切磋琢磨し、ときに協力できるライバルを持てることは、人生で最大の幸福の一つだ。
「切磋琢磨」の類語
「切磋琢磨」の類語には、「砥礪切磋(しれいせっさ)」が挙げられます。「砥礪」は「ていれい」とも読み、以下の2つの意味を持ちます。
- 砥石(といし)。
- 研ぎ磨くこと。努め励むこと。
「砥」も「礪」も「と-ぐ」という訓読みを持ち、「研ぐ」という意味のある漢字です。「切磋琢磨」と同様に、石や玉などを磨き上げる様子がイメージできますね。
ただし、「切磋琢磨」の2の意味のような、ともに励まし合って向上するというニュアンスは含まれていません。