「触らぬ神に祟りなし」の意味
「触らぬ神に祟りなし」は、物事に関わりを持たなければ、災いを招くことはないという意味です。巻き添えを食らって大変なことになるよりも余計な手出し口出しをしない方がいいという教えが込められています。
「触らぬ神に祟りなし」の使い方
- 今日はなぜか妻の機嫌が悪い。触らぬ神に祟りなしと言うから、早めに風呂に入って寝よう。
- 初めてママ友会に参加した。色々あるようだが、新入りなので、触らぬ神に祟りなしと思い、すべて聞き流すことにした。
- 電車で酔っ払いに絡まれた。触らぬ神に祟りなしと思っているのか、誰も助けてくれなかった。
どれもトラブルが予測される状況なので、あえて関わらないようにしていますね。3つ目の例文ではそうした状況を、事なかれ主義だと否定的に捉えています。
「触らぬ神に祟りなし」の由来
「触らぬ神に祟りなし」は古代信仰から生まれたことわざです。
その昔、人々は神の怒りが存在すると信じ、畏怖しておりました。というのも、人々の暮らしが自然と共にあったころ、天変地異は神の仕業だと考えられていたからです。神は人に加護を与える存在である反面、その怒りに触れれば恐ろしい祟りをなす存在であり、神に背くような行いの結果災いが起こると信じられていたのです。
「触らぬ神に祟りなし」の本来の意味
祟りとは神仏が意に反する人間の行為に下す咎めの事です。また触らぬ神とは神様と接触を持たない事です。つまり神様に願掛けをしたり、自分勝手な祈りを捧げたりするから、逆に神罰が下ることにもなる、神のお気に召すかどうかわからないような神事はしないほうがいい、というのが本来の意味でした。
「触らぬ神に祟りなし」の現代の使い方
そこから転じて、現代においては、神や仏とは関係のない事柄について用いられるようになりました。祟りをおそれる気持ちが強すぎるためか、何事にも消極的で感心を示さない、自己保身にばかりはしる、事なかれ主義などといった逃げの姿勢を表されるものとして使われることも多いようです。
「触らぬ神に祟りなし」の類義語
神や仏を例えにした同じような意味のことわざはたくさんあります。
- 知らぬ神に祟りなし
- 参らぬ仏に罰は当たらぬ
- 仏ほっとけ神構うな
一方、意味は同じでも例えが違うことわざもあります。
- 触らぬ蜂は刺さぬ(蜂の巣に近づいたり触ったりしなければ刺されることもない)
- 瘡もさわらなければうつらぬ(皮膚にできた腫れものも触らなければうつらない)
- 七日通る漆も手に取らねばかぶれぬ(毎日そばを通る漆の木でも手に触れることがなければかぶれることもない)
「触らぬ神に祟りなし」より具体的で身近な例えがあげられていてわかりやすいですね。
「触らぬ神に祟りなし」の対義語
- 義を見てせざるは勇なきなり(人として当然するべき正しい事だと分かっているのに、それを実行しないのは勇気がないからだ)
「触らぬ神に祟りなし」の英語表現
英語では同じ意味のことわざは犬が例えに使われています。
- Let sleeping dog lie.(眠っている犬はそのままにしておけ)
また似たような意味の表現は他にも色々あります。
- Far from Jupiter, far from thunder.(ジュピターから遠ざかれば雷も遠ざかる)ジュピターはローマ神話における天を支配する最高の神であり雷電を武器としています。
- It is ill jesting with edged tools.(刃物で遊んではならない)
- He who meddles with quarrels gets the ridding stroke.(他人の喧嘩に口出しすると殴られる)
まとめ
「触らぬ神に祟りなし」には「義を見てせざるは勇なきなり」という対義語があります。どちらも古くから人々に言い伝えられてきた教えが込められています。どちらのことわざがふさわしい状況なのか、時と場合によって使い分ける判断力が必要とされるのかもしれませんね。