「妄言」の読みと意味
「妄言」は「もうげん」と読みます。「妄」は「ぼう」とも読むため、「妄言」を「ぼうげん」と読む場合もあります。「妄」は訓読みで「みだ(り)」で、「自分勝手」「むやみに」といった意味合いを持ちます。
「妄言」の意味は、①でたらめ・でまかせの言葉です。「妄言」は必ずしも「嘘」とは限りません。が、嘘も本当もないまぜにして、深く考えることもなくやたらと発言するのが「妄言」なのです。
もうひとつ、「妄言」には、②自身の発言に対する謙遜の意味もあります。手紙などで「妄言多謝(つまらぬことを色々書いてすみません)」のように用いますが、用法として一般的なのは①の「でたらめ・でまかせの言葉」のほうでしょう。
「妄言」の用例
「妄言」の使用例を挙げます。
- あの人はたいして知らないことでも軽々と妄言を吐く人だ。
- ネットの妄言に憤慨した。
- 妄言に振り回されて事実がわからなくなった。
上記①の意味の用法の場合、「妄言」を発するのは他者です。根拠のない発言や自分勝手なものいいに対して使いますので、当然「妄言」という語は悪い意味合いを持っています。
「妄言」を用いた四字熟語
「妄言」という言葉を含んだ四字熟語は多くありませんが、以下のようなものが挙げられます。
- 妄言妄聴……根拠のないでたらめを言ったり、他人の話をいい加減に聞くこと
- 妄言綺語……簡単にいえば「嘘をつくこと」。「綺語」とは「虚飾の言葉」
「妄」を含んだ熟語
ついでに「妄」という漢字を使った熟語もご紹介しておきましょう。なかには私たちになじみ深い言葉もあります。
- 妄信……事実かどうかわからないことを、むやみやたらに信じること
- 妄想……事実でないことについて想像をめぐらすこと
- 妄挙……思慮分別のない勝手な行動。「ぼうきょ」とも
- 妄動……上に同じ。「ぼうどう」とも
- 妄語……嘘。誠実でない発言。「ぼうご」とも
いずれも「妄言」における「妄」の使い方と同様であることがおわかりいただけるかと思います。
「虚言」「暴言」「放言」との違い
「妄言」の意味は冒頭でお伝えしました。一方、よく似た言葉には「虚言」「暴言」「放言」といったものがあります。「妄言」と意味の重なる部分もありますが、ニュアンスの違いをご説明します。
- 虚言……「虚言」は明確に「嘘」という意味です。「妄言」の場合は嘘も事実も関係なく、めったやたらに言いまくることなので、その点に違いがあります
- 暴言……他者を不快にするような乱暴な発言のこと。「妄言」も他人を不快にしかねませんが、少なくとも「暴」のニュアンスは含んでいません
- 放言……自分勝手なでまかせ発言。こちらは「妄言」とおおむね同じ意味と捉えてよいでしょう
その他の類義語・関連語
ほかにも「妄言」の類義語・関連語はたくさんあります。「嘘」「虚辞」「偽言」「空言(くうげん・そらごと)」「偽り言」などなど。ご興味がありましたら、この機会にそれぞれの意味を調べておくのもよいかもしれません。
「妄言」のまとめ
「妄言」はいい加減な言葉です。それをめったやたらに口にするからタチが悪いということです。現代のネット社会、事実か否か、裏づけをしないまま発言したり、その言葉をたやすく信じて他者に伝えることで「妄言」は拡散していきます。いわゆる「デマ」のたぐいは「妄言」から生まれる、あるいは「妄言」そのものともいえるでしょう。
「妄言」には他者ためになる話はありません。本来はその場限りで消えていくべき無責任な言葉が、いまではネットのなかに半永久的に残り、次の「妄言」を生みだしかねない社会になりました。「妄言」を無くすには、聞く側に真実を見抜く目や耳、抑制する力が必要なのかもしれません。