「伺う」の意味
「伺う」(うかがう)は「聞く・問う・訪れる」の謙譲語です。「伺う」にはこのほかに、寄席(よせ)などで客に芸を披露するなどの意味もありますが、ここでは、3つの謙譲表現について解説します。
「伺う」の使い方
「伺う」は謙譲語ですから、話し相手や会話中に出てくる人物に対して自分がへりくだる場合に使います。
【例文】
- 「聞く」:取引先に出向いて、取引条件について伺った。
- 「問う」:先程のプレゼン内容について、伺ってもよろしいでしょうか。
- 「訪ねる」:明日の午後2時に御社へ伺います。
「お伺い」は、謙譲語の「伺う」に敬語を作る接頭辞の「お(御)」が付いているので二重敬語です。しかしながら、「お伺いします・お伺いいたします」などの言い回しは習慣的に定着しています。
「伺う」の類語
「聞く」の謙譲語
「聞く」の謙譲語として用いる「伺う」は、「聞かせていただく・お聞きする・拝聴する・承る(うけたまわる)」などで言い換えられます。
【例文】
- 先生から貴重なお話を聞かせていただいた。
- 品質の向上のためには、お客様のご意見をお聞きする必要がある。
- お寺で住職の講和を拝聴した。
- コールセンターで顧客からの問い合わせを承る。
「問う」の謙譲語
「問う」の謙譲語として「伺う」を使う場合は、「質問させていただく・お尋ねする」などで置き換え可能です。
【例文】
- 御社の新製品について、質問させていただきたく存じます。
- 日本経済の今後の見通しについて、教授にお尋ねします。
「訪れる」の謙譲語
「訪れる」の謙譲語として使う「伺う」を言い換える際は、「お訪ねする・訪問させていただく・お邪魔させていただく」などを使います。
【例文】
- 近日中に、商品サンプルを持ってお訪ねします。
- 本日の14時に訪問させていただきましたが、お留守でしたので後日出直します。
- ご挨拶がてら、お邪魔させていただきたく存じます。
ただし、「お邪魔しました」は退席する際の挨拶として用いる言い回しなので、この場合は「伺う」と同じように用いることはできません。
「参る」は「伺う」の類語か?
次の「伺う」と「参る」を使った文章の意味に違いはあるでしょうか。
- 「先生のお宅へご挨拶に伺います」
- 「先生のお宅へご挨拶に参ります」
「参る」とは
「参る」にはいくつかの意味がありますが、2においては「行く・来る」の丁寧語です。つまり、話し相手や読み手に対して丁寧な言い方をしていることになります。
「伺う」と「参る」
誰かを訪問するためにどこかに赴くという文脈で使う場合を除いて、「京都へ伺います」とは言いません。それは、へりくだるべき相手がいないからです。一方、「京都へ参ります」という文章が正しいのは、話し相手に対しての丁寧表現だからです。
上の例文2の話し相手が先生ならば、先生に対する丁重な気持ちを表すので、「参る」も「伺う」も先生に対して気を遣っています。
しかし、2の話し相手が先生以外の人物の場合は、その人に対する敬語となるため、先生に対する敬語表現とはなりません。気遣いの対象が必ずしもイコールにならないという点において、「参る」は「伺う」の類語とは言えないでしょう。
「伺う」と「窺う」の違い
「伺う」と間違われやすい言葉に「窺う」があります。どちらも「うかがう」と読むため、SNSなどでは混同されているケースが散見されます。
「窺う」とは
「窺う」には、「そっとのぞいて様子を探る」「それとなく状況を観察する・推定して知る」「好機を逃さないように待ち構える」などの意味があります。
「窺」という字は常用漢字ではないため、新聞などでは「うかがう」と平仮名で表記されることが多いようです。
【例文】
- 弟はテストの点数が悪かったので、両親の顔色を窺っている。
- いつになく熱のこもった彼女の言葉からは、決意のほどが窺われた。
- 辛抱強くチャンスを窺っていたA選手は、ここぞとばかりにシュートを決めた。
「伺う」と「窺う」
ここまでの説明で「伺う」と「窺う」は意味の違う言葉であることがわかるでしょう。ワープロソフトやスマートフォンでは、「うかがう」と入力すると「伺う」と「窺う」の両方が変換候補として出てきます。誤字を防ぐためにも両者の違いを覚えておきましょう。