「平仄」とは?意味や使い方をご紹介

「平仄」という言葉をご存知でしょうか。「平」はともかく、「仄」の字はいっけん簡単そうに見えて普段なかなか見かけない字ではないでしょうか。「平仄が合わない」などの言い回しも含め確認しておきましょう。ここでは、「平仄」の意味や使い方をご紹介します。

目次

  1. 「平仄」の意味
  2. 「平仄」の使い方
  3. 「仄」の字について

「平仄」の意味

「平仄」は、<ひょうそく>と読み、以下の2つの意味があります。

  1. 平と仄。平字(ひょうじ)と仄字(そくじ)。漢詩における、平字・仄字にまつわる韻律の決まり。
  2. つじつま。条理。

1の意味は、少々専門的で難しいかもしれません。以下にもう少し詳しく解説します。

「平字」と「仄字」

六朝~唐時代の中国の漢字には、「四声(しせい、ししょう)」と呼ばれる4つの声調(音韻、アクセント、音の上げ下げ)による発音の区別がありました。四声の種類と特徴は以下の通り。

  • 平声(ひょうしょう)…高く平らに発音するもの。
  • 上声(じょうしょう)…低く伸ばしたのち、最後に上昇する声調。
  • 去声(きょしょう)…高降り(尻下がり)の声調。
  • 入声(にっしょう)…(p)(t)(k)などの短促の(詰まった)声調。

このうち、平声のみが「平字」に属し、残り3つが「仄字」(仄声)です。これは何のための区別なのかというと、漢詩を作る際に、「平字」と「仄字」を規則的に配分することで、詩に欠かせない音の調和やリズム感を生み出すためです。

「平字」と「仄字」を並べる漢詩の規則は、字数(五・七・五)や押韻などと同様にとても重視されたため、現代でも「物事のつじつま」という意味で残ったのではないかと考えられます。

「平仄」の使い方

詩において

詩作における「平仄」は、上記の通り、唐時代以降に成立した「近体詩」の重要な規則のことを指して使います。漢詩に親しんでいる者であれば、基礎的な知識と言ってよいでしょう。

ただし、「二四不同二六対」「一三五不論」などなど、非常に多様な規則が存在するため、知識があっても即実践は難しいかもしれません。

一般的に、平字は「〇」、仄字で「●」の記号で表現され、入門書などでは「平仄」の並び方の説明に使われるほか、発音をわかりやすくするために字と併記されることもあります。

【例文】

  • あの人は教養ある人だから、平仄が何たるかはしっかりわかっている。
  • 平仄を合わせるのは、漢詩の鉄則だ。

一般表現として

一般表現としての「平仄」は、主に「平仄が合う/合わない」のかたちで、物事の道理が合う/合わない、筋道が通る/通らないことを表すために使うことができます。

わかりやすいのは、推理小説などで、探偵が容疑者の証言の食い違いに気づくようなシーンでしょう。「AさんとBさんの言っていることは矛盾している。どちらかが嘘をついているに違いない」。これが「平仄が合わない」という例です。

【例文】

  • 虚言癖がある彼は、初めから物事の平仄など気にせず嘘をついて回る。
  • その時間にアリバイがある私を犯人扱いするのは、平仄が合いません。
  • 世の中は平仄が合うことばかりではない。時には道理に外れたことも起こるものだ。

「仄」の字について

「平仄」の「仄」の字は、「人が頭をかたむけている」象形であると考えられ、「かたわら(側)」「かたむく」「ほのか、かすか」「いやしい」「うらがえる」などの意味があります。

「平」と「仄」を並べてみると、「平らであること」と「かたむいていること」、対立する言葉を合わせてひとつにした言葉であることがわかりますね。漢詩においては、比較的長く伸ばす音を「平声」、その他の音を「仄声」として総称したと考えられています。

「仄」の字を使う熟語には、以下のような言葉があります。

  • 仄日(そくじつ)…かたむく太陽。夕日。斜陽。
  • 仄聞(そくぶん)…うわさに聞く。ほのかに聞く。(=側聞)
  • 仄目(そくもく)…正視しない。目をそらす。(=側目)


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