「嘆かわしい」とは?
「嘆かわしい」(なげ・かわしい)とは、なんらかの状況に対し、情けなく悲しく、嘆かずにいられないさま、ひどく残念に思うさまを表す形容詞です。
大きなポイントとして、第三者的な視点の感情を表す言葉であり、実際に自分が泣いて悲しむ、悲嘆に暮れる、というイメージはありません。「いかにも嘆かずにはいられない」という強意表現と考えても良いかもしれません。
「嘆く」の意味
「嘆かわしい」の大元が、動詞「嘆く」です。「嘆かわしい」をより深く知るために、この動詞の意味を探っていきましょう。「嘆く」の意味は、現代日本語で使われているものが大きく分けて三つあります。
- 悲しみ泣く、悲嘆にくれる、ひどく悲しむ。
- 世の風潮、世相、対象とするものの状況を憂えて憤ったり慨嘆する。
- 心にかなわぬことがあり、嘆息する。
「嘆かわしい」に「泣く」という意味はありませんが、それ以外の「嘆く」の意味のすべては、「嘆かわしい」という心情に反映されています。
「嘆かわしい」の使い方
たとえば、自分の家族が社会的な問題を起こしてその渦中にあるようなとき、「嘆かわしい」という言葉を発するでしょうか。使えはしますが、違和感があり、「嘆く」「悲嘆に暮れる」「悲しむ」などのほうが自然です。
「嘆かわしい」は、冷静で客観的、批評的ニュアンスが強い言葉であり、どちらかといえば世相や社会的事件、政治などへの義憤、失望を表現するのにふさわしい言葉です。
批評的に発することが多い言葉であるため、こもる感情も直情的ではなくなります。自身や身内が社会に大きな迷惑をかけたようなおりに「嘆かわしい」などと言えば少々不自然で、まるで他人事のようだとさらに非難を浴びてしまうかもしれません。
「嘆かわしい」の例文
- 嘆かわしいことに、母校の小学校では学級崩壊が進み、正常な授業が成立しないそうだ。
- 地球温暖化による様々な被害が年々増していることは嘆かわしい。
- 正義を掲げるべき政治家が、最も嘘をつく人間の一種となりはてているのは嘆かわしいことだ。
「嘆かわしい」の類語
「情けない」
「情けない」(なさ・けない)は、現代日本語では大きく分けて下記の二つの意味で用いられる言葉です。
- 同情の余地がない、嘆かわしい。
- 見るにしのびない、みじめである、期待外れで残念だ。
「嘆かわしい」とは異なり、「情けない」は自身についても対象とします。また、「嘆かわしい」は、悲惨で深刻な問題、大きな困難などにも用いますが、「情けない」は比較的小さな問題や軽い失望などに適する言葉です。
【例文】
- 受験した大学をすべて落ちるとは、自分で自分が情けないよ。
- そんなケアレスミスで契約が取れなかったとは、情けないな。
「浅ましい」
「浅ましい」(あさ・ましい)は多義的な言葉ですが、「嘆かわしい」の類語としては、見苦しく情けない、という意味を挙げることができます。
ほかにも、品性が卑しく下劣だ、身分や姿かたちが卑しくみすぼらし、などの意味があり、そのこと自体を「嘆かわしい」ととらえることができそうです。
【例文】:なにかと言えばSNSを通じて非難や攻撃が飛び交うとは、浅ましい世の中になったものだ。