「にわかに」とは
「にわかに」は、「俄かに」と漢字で表記し、「急に・突然に・すぐには」という意味があります。形容動詞「にわか」の連用形です。以下では、まず「にわか」について見ていきます。
「俄(にわか)」
「俄(にわか)」には、以下のようにいくつかの意味があります。
- 物事が急に起こるさま。突然。
- 一時的であるさま。かりそめであるさま。
- 病気が急変する(病状が悪化する)さま。
- 俄狂言(にわかきょうげん)の略。
現代においては、1や2意味での使用が多いようです。例えば、「にわか雨」「にわか仕込み」などです。3の意味では、「にわかになる」の形で危篤状態になることを意味しますが、古い使い方で現代では使われていません。
インターネットで「にわか」と言えば「にわかファン」「にわかオタク」を指した言葉で、多くが煽(あお)りや自虐(じぎゃく)ワードとして、ネガティブなニュアンスで使われています。
「にわかに」の使い方
「にわかに」には、二通りの使い方がありますので、分けてご紹介します。
「物事に急な変化が現れるさま、起こるさま」
「にわかに」は、「にわかに雨が降る」や「にわかに注目を集める」というように、「物事に急な変化が現れるさま、起こるさま」の表現するときに使います。
【例文】
- 彼は、父親の話になると今までの笑顔が消え、にわかに表情が曇りその後は一言も話さなかった。
- 「一天にわかにかき曇り、ぺペンペンペン」と、テレビから小気味よい講談師の声が聞こえてきた。
- 彼が発信したユーチューブ動画がにわかに注目を集め、彼がテレビに登場する回数が多くなった。
「その場では、すぐには~できない、し難(がた)い」
もう一つの使い方は、否定語と一緒に使って、「その場では、すぐには~できない、し難(がた)い」という意味での使用です。「予想もしない、思いがけないことで信じられない」という気持ちが表れています。
【例文】
- 彼女には、兄が語った不可思議な体験談は、にわかには信じ難い内容のものだった。
- 災害から数年たった現在でも、目前に広がっている光景は、にわかには信じられないほどその時の状況をそのままとどめている。
「俄狂言」とは
上記の4の意味「俄狂言(にわかきょうげん)」が、「にわか」の語源という説があります。「俄狂言」とは、江戸時代中期から明治にかけて、都市部で流行した路上や宴席などで突然行われた滑稽(こっけい)な即興芝居(寸劇)のことを指します。
「素人が即興で始める」というところから「俄(にわか)」と名付けられたという説です。「仁輪加」「仁和歌」「二和加」とも表記され、茶番(ちゃばん)とも呼ばれています。後には、専門の俄師(にわかし)という職業も登場しています。
大阪が発祥(はっしょう)で、各地に広がり、博多俄・肥後俄・佐賀俄・鹿児島俄・江戸吉原俄などがあります。内容は、歌舞伎の演目の再現や滑稽な話で、後に確立される喜劇文化の源流とされています。「にわか」は、現在でも各地方特有の形で、祭りなどの際に演じられています。
「にわかに」の類語・関連語
「急に・突然に」の意味から
「にわかに」の類語・関連語には「急に・突然に」というような意味から以下のように多くの言葉があります。
「否定する文脈」の意味から
「すぐには~できない」「物事の実行や実現が容易ではないさま」など、否定の意味での類語・関連語としては、以下の様な言葉、言い回しがあります。「にわかに」と同様、否定語と一緒に使います。
- 「おいそれとは」:簡単には~できない。「人の性格はおいそれとは変わらない(変えるのは難しい)」
- 「むざむざと」:やすやすと~できない。あっさりと~できない。「こんなビッグチャンスをむざむざと諦めるわけにはいかない」