「募る」の意味とは?
「募る」(つの-る)の意味は以下の2つです。
- 物事の勢いが激しくなる、人の感情や欲求などがだんだん強まってくる
- 物や人を広く集める
「募る」の使い方と例文
「募る」の2つの意味について、それぞれの使い方と例文を見ていきます。
1.激しくなる・強まる
「募る」は物事の程度がだんだんと激しくなっていく様子を表すのに使います。「風雨が募る」「寒さが募る」「風が吹き募る」「雨が降り募る」といったように、周囲の状況にだんだんと勢いがついていくさまを表現することができます。
また、人の感情などが強まり抑えきれなくなる様子に「募る」を使う場合もあります。例を挙げると「言い募る」(興奮して激しい口調でまくしたてる)「思いが募る(募る思い)」「不安が募る」「恋しさが募る」などです。
【例文】
- 台風が近づくと、風雨が募ってくる。
- 暑さが募ると、ビールやアイスに手が伸びる。
- 募る寒さに閉口しています。
- まもなく初舞台だ。早く舞台に立ちたいという気持ちが募る一方で、落ち着かなさも感じる。
- 調子の良い返事ばかり繰り返す彼に不信感が募る。
- 「あなたを思うと恋しさが募る毎日です」とメッセージを送ったら、「重い!」と返信された。
2.広く集める
「募」の字義は、「広く呼びかけて求める」というものです。そこから、「募る」は、目的のために広く(比較的大規模な範囲に)呼びかけて必要な物や人を探し求めて集めるという意味で使われます。
「寄付を募る」「会員を募る」「ボランティアを募る」「(仕事などで)優秀な人材を募る」「入居者を募る」などが、よく使われる例です。
【例文】
- SNSの公式アカウントで、ファンクラブの会員を募るメッセージを見かけた。
- 旅館のサイトで、訳ありの部屋に泊まる客を募っていた。
- 経理の経験者を募るために、ハローワークに求人広告を出した。
- あのビルではテナントを募っているということだ。
- まだ空きがあるようで、店頭で伊豆の温泉めぐりツアーの参加者を募っていた。
「募る」の類語:激しくなる・強まるの意味
高じる・昂じる・嵩じる
「高じる/昂じる/嵩じる」(読みはいずれも「こう-じる」)は、気持ちなどの程度が激しくなる、もしくはひどくなるということです。「昂」「嵩」は常用漢字ではないため「高じる」という表記が一般的です。「高ずる/昂ずる/嵩ずる」(こう-ずる)も同様の意味を表します。
これらの「こうじる/こうずる」と読む言葉は、病気がひどくなることを表す場合もあります。一方、「募る」には病気が悪くなるという意味はありません。
【文例】
- 文学への志が高じて、長編小説を書くまでになった。
- 料理好きが高じて、カフェを経営する夢を叶えた。
- 持病が高じて倒れてしまったが、早期復帰ができてよかった。
駆られる
「駆られる」(か-られる)は、人の心情が激しく動かされる様子を表します。この言葉は、動詞の「駆る」の未然形「から」に助動詞「れる」が付いた言葉です。感情が強くなり抑えきれなくなっていく場合に使う「募る」とよく似ています。
【例文】
- 浮気の現場を見て、ひどい嫉妬心に駆られる。
- 人前で嫌味を言われ続け、怒りの気持ちに駆られて、手を出してしまった。
「募る」の類語:広く集めるの意味
募集
「募集」(ぼしゅう)とは、広範囲に一般の人に呼びかけをして物や人を集めることです。「募」の字義は前述の通り、「広く呼びかけて求めること」、「集」の字義は「よせあつめること」。「募る」と同じような意味で使えます。
【例文】
- オリンピックのボランティアの募集を見て登録してきた。
- 市役所では市政50周年を記念して、市内の名所を撮影した写真を募集をしているそうだ。
駆り集める
「駆り集める」(かりあつめる)とは「駆る」(「駆り」は連用形)と「集める」の連語で、いろいろな場所から多くの人などを急いで集めることです。
「駆る」は追い立てて激しい勢いで向かわせる意味ですが、この場合は集める必要がある場所に急いで向かわせることを表しています。
「募る」の人や物を集めるという部分は似ていますが、「駆り集める」は「急いで集める」というところが強調されています。
【例文】
- 急に本社での業務が増えたので、各支店の協力を仰いで優秀な人材を駆り集めた。
- 大きな事故で負傷者が多数出たため、近隣の医療従事者が駆り集められた。