「漸く」とは?
「漸く」は、「ようやく」と読み、以下の4つの意味を持つ言葉です。
- しだいに。だんだんと。
- しばらくたって。
- おもむろに。ゆっくりと。
- やっとのことで。かろうじて。
以上のように多くの意味がありますが、2や3の意味は現代ではあまり使用例が多くないようです。
また、それぞれがまったく別々の意味として独立しているといよりは、「漸く」は「ゆっくりと段階を経て何かが変化する(した)さま」を表す言葉と捉えれば良いでしょう。
「漸く」の使い方
「漸く」は、一般的にはひらがなで「ようやく」と書かれることが多く、「漸」の字があまり使われていない・字面から意味を想像しにくいこともあり、漢字表記では相手に意味が伝わらない場合もあるでしょう。
また、公的文書においては副詞はひらがな表記するというルールもありますから、特にこだわりがない限りは「ようやく」と書いてよいでしょう。(本記事では「漸く」表記で統一します)
「漸く」にはいくつかの意味がありますが、現代では「しだいに。だんだんと」や「かろうじて。やっとのことで」の意味で使われることが多く、ニュアンスが混じることもあります。
例文
- 漸く夜が明けてきた。
- このところ暖かくなってきた。漸く春が来たらしい。
- 社会人二年目。重要案件も任されるようになって、漸く自信がついてきた。
- 会場を入り口で係員に止められた。自分が関係者であることを説明すると、漸く入場を許可された。
- 何度も親に叱られて、彼は漸く受験勉強をはじめた。
「漸く」の字義
「漸く」に使われている「漸」(ゼン)の字は、「水」(さんずい)と音符「斬」からなり、もとは中国にある川の名前でした。そこから、「川の水がゆっくり進むさま」→「しだいに、だんだんと」という意味を持つようになったと考えられています。
字の中に「しだいに~」という「変化のしかた」が含まれている点が特徴で、以下のような熟語にもその意味がよく表れています。
- 漸近線(ぜんきんせん)…限りなく近づいていくが、決して接することのない直線のこと。(ある曲線上の点が原点から無限に遠ざかる際に、無限小に近づいていくが、決して距離0にならない直線)
- 漸次(ぜんじ)…だんだん。しだいしだいに。
- 漸増/漸減(ぜんぞう/ぜんげん)…だんだんに増すこと/だんだんに減ること。
「漸く」の類語
徐々
「徐々」(じょじょ)には、「ゆるやかに進むさま」「少しずつ変化するさま」といった意味があり、物事の緩慢な変化のあり方が「漸く」とよく似ています。
ただし、「漸く話し合いが終わった」などのように、「かろうじて。やっとのことで」という意味は表せませんので注意しましょう。
【例文】:これまで不明だった古代日本の歴史が、徐々に明らかになってきた。
ついに
「ついに」(遂に/終に/竟に)は、「終わりに」「しまいに」「とうとう」といった意味の言葉です。
「かろうじて。やっとのことで」という意味の「漸く」の類語としては、こちらがふさわしいでしょう。
【例文】:苦節七年、ついに私たちの研究が実を結んで世の役に立つ日が来た。
何とか
「何とか」は、物事の限度・程度を表す言葉のひとつで、「どうにか。苦労して」や「かろうじて。やっと」などの意味があります。
「漸く」の次に何らかの結果や成果が続く場合、「何とか」で置き換えてもその限度・程度は近いニュアンスとなるでしょう。強意表現に「何とかかんとか」があります。
【例文】:わずかな収入で、何とか(何とかかんとか)生活している。