「押し並べて」とは
「押し並べて(おしなべて)」とは、元来、古典の用法で全体を同じように並べることで、そこからありきたり、なみなみ、普通といった意味をあらわすようになりました。この場合、うしろに格助詞「の」をつけて使われています。「押し」は「並べて(る)」を強調しています。
原文:はじめよりおしなべてもの上宮仕へし給ふべき際(きは)にはあらざりき
訳文:はじめは、ありきたりの帝(みかど)のお側勤めをされなければならないような低い身分ではありませんでした。
上記の意味が転じ、現代では副詞として、おおよその傾向を指して言うさま、概して、みんな同じであるさま、一様にということを表します。
「押し並べて」の使い方
「押し並べて」は、全体像を把握したり、みんな同じだということを表現するために使われます。「押し並べて~だ」と、後に続く内容を修飾します。例外がないというニュアンスを含んでいることもあります。
例文
- 息子は、小学校・中学校では押し並べて成績が良かったが、高校に入ってからはパッとしなくなった。
- 日本製の製品は海外で押し並べて評価が高いが、その生産現場はアジア諸国にシフトしている。
- 瀬戸内の押し並べて温暖な気候で育った私には、北海道の冬の寒さは耐えられない。
- この間のプレゼンは押し並べて不評だったと、朝から課長の機嫌が悪い。
「押し並べて」の類語
「一様」
「一様(いちよう)」は、 全部同じ様子、同様、よくあること、ありふれたこと、普通といった意味です。うしろに「に」や「な」といった助詞をつけて使われることが多い言葉です。
「様」には、ありさま、かたちという意味があり、「一」がついて一つのありさまというところから、このような意味になりました。
【例文】
- 個性の尊重が大事だと言いながら、例えば、就活生はみんな一様に同じスタイルで個性を隠しているね。
- あの団体の人たちは誰もが一様な笑顔で受け答えをするが、なんか気味が悪い。
「総じて」
「総じて(そうじて)」は、全部合わせて、すべて、全体的な傾向として、だいたい、おおよそという意味を持った副詞です。この言葉も「押し並べて」の類語と言えます。
【例文】
- 今度の研修旅行では総じてどれぐらいの費用が掛かったか計算してみた。
- 今年の梅雨は総じて豪雨が多く、各地で災害をもたらした。
「一般/一般的」
「一般(いっぱん)」には、以下のような意味があります。
- 社会に広く共通して認められて、行き渡っていることやそのさま。全般。
- ありふれている。あたりまえ。普通。世間。
- 特別、他と異なるところがないことやそのさま。同一。同様。
「一般的」の「的」は、名詞やそれに準ずる語に付いて形容動詞の語幹を作り、~のような、~ふうなという意味を表す接尾語です。「一般」も「一般的」も上記の太字部分の意味において、「押し並べて」の類語と言えるでしょう。
【例文】
- 感染症による外出自粛などの影響で、一般的に景気は悪くなっている。
- 世間一般にはあまり知られていないが、彼女はSNSで有名なインフルエンサーだ。
「おおむね」
「おおむね」の意味は、だいたい、おおよそ、大意、あらましです。漢字表記では「概ね」が一般的ですが、「大旨」とも書きます。100パーセントではないが、まあそんなところ、というようなニュアンスがあります。
おおよその傾向を指して言うさま、概して、といった意味での「押し並べて」に近いですね。
【例文】
- 今回の議案の内容については、おおむね了承したが、細かいところはこれから詰めていこう。
- わが社の新製品は、ユーザーや評論家からも、おおむね好評を得ている。