「前のめり」の意味とは?
「前のめり」(まえのめり)とは、「前方に倒れそうに傾くこと」です。「のめり」は、体が傾く、もしくは倒れることを表す「のめる」という動詞が、連用形に変化して名詞化したものです。
「のめる」だけではなじみが薄いかもしれませんが、「のめり込む」や「つんのめる」などは聞いたことがある人も多いでしょう。
従来はなかった用法ですが、近年では、上記の意味が転じて「積極的に物事に向かう」、「準備不足であるのに物事を行おうとする」ということも表すようになりました。
「前のめり」の使い方
前方に倒れそうになる
従来の意味で「前のめり」を用いる場合は、何らかの力が作用して、前方に倒れそうに傾く状態を表す時に使います。「前の方向」というのがポイントで、横方向や、後ろの方向に傾いた場合、「前のめり」とは使いません。
【例文】
- バスが急停車して、立っていた乗客が前のめりになり危なかった。
- 街路樹の根っこにつまずき、前のめりになって恥ずかしかった。
積極的に物事に向かう
本来の意味から転じて、積極的な人の様子や前向きな性格を表現することもあります。前傾姿勢になる様子を、身を乗り出すように行動する、積極的な姿勢にたとえています。
【例文】
- 新人のAさんは前のめりに仕事に取り組んでいて、とても素晴らしいね。
- Bさんの前のめりな生き方について、多くの女性の共感を呼んでいる。
準備不足なのに物事を行おうとする
「前のめり」は積極的な性格を表すこともありますが、ネガティブな意味にとらえることもできるでしょう。たとえば、よく考えずに動いて準備不足で失敗する、自分の都合で進めようとするなどといった場面が挙げられます。
【例文】
- 恋愛に前のめりになり、片思いの相手にしつこくしてドン引きされてしまった。
- 儲け話を鵜呑みにして前のめりに独立したが、失敗して廃業する羽目になった。
「前のめり」の類語
「つんのめる」
「つんのめる」は、勢いよく前方向に倒れそうになる、倒れるくらい前に体が傾いてしまうという意味です。「前方に傾く」という意味での類語たりえます。
「つんのめる」の「つん」は接頭語で、漢字表記は「突ん」、後の「のめる」の意味を強調します。動詞「突く」が連用形「突き」に、さらに「突ん」に変化しました。
【例文】
道に落ちていたバナナの皮で滑り、つんのめってしまった。
「自発的」
「自発的」(じはつてき)とは、人から指示を受けることなく、強制されることもなく、自ら進んで物事を行う様子をいいます。「前のめり」の「積極的に物事を行う」というニュアンスに近いでしょう。
【例文】
地域の行事を嫌がる人も多いが、引っ越してきたばかりのBさんは自発的に参加してくれて助かっている。
「無鉄砲」
「無鉄砲」(むてっぽう)は向こう見ずな人、正しいかどうかなどの結果を考えずにむやみに行動する様子をいいます。「準備不足なのに物事を行おうとする」というイメージが「前のめり」と似ていますね。
「無鉄砲」は当て字で、「無点法」(むてんぼう)、「無手法」(むてほう)から変化しています。
【例文】
若い頃、思いつきで富士登山をしたのだが、今思えばあまりにも無鉄砲な計画だったと反省している。