「どす黒い」とは
「どす黒(ぐろ)い」とは、「にごったように黒ずんでいる」という意味の形容詞です。日常的に使われる言葉ですが、「どす黒い血」や「どす黒い顔」など、暗い・悪・不安といった嫌なイメージが付きまとうことが多い言葉です。
「どす黒い」は、「どす」と「黒い」という語から成り、「黒い」は、色を表現する形容詞です。一方「どす」には、いくつかの意味と使用法があります。
「どす」の意味と使い方
「どす(ドス)」は、「脅す(おどす)」から転じたものと言われており、以下の様な意味や使い方があります。
- 短刀。匕首(あいくち)など、懐(ふところ)に隠し持つ短い刀:「ドスを呑(の)む(人を脅すために懐に短刀などを隠し持つことから)」
- 人を恐れさせるような気配。すごみ:「ドスを利(き)かす」「ドスの利いた声」
接頭語としての使い方
「どす」は、色を表す形容詞の前について「にごったような状態であること」を表現する言葉です。「どす黒い」の使用例が圧倒的に多く、その他では「どす赤い」や「どす青い」などの使用例がありますが、あまり知られていません。
【例文】
- 腐ってどす赤く変色した肉塊にカラスが群がっている。
- さしかける古い森林の深いどす青い陰「岡本かの子『河明り』より」
方言としての使い方
京都弁に「~どす」という言い回しがあります。「~でおす」という言葉が縮まったもので、共通語の「~です」と同じ意味で使われています。現在は、年配層や祇園などの花街の一部で使われています。映画などでは舞妓さんが話すのを聞くこともありますね。
また「です」と同じ意味で、「おす」という用法があります。例えば「白いどす」「暑いどす」とは言わず、「白(しろ)うおす」「暑(あつ)うおす」といった感じで「おす」を使用します。
【例文と意味】
- ほんまどす:本当です。
- おぶういかがどすか:お茶いかがですか。
「どす黒い」の使い方
「どす黒い」は、「どす黒い○○」という言い回しで、色のほかに、人の「嫉妬(しっと)」や「恨(うら)み」「欲望」といった、人が内面に隠し持っているドロドロした暗い感情の比喩としても使用されます。
【例文】
- 現場のいたるところに見られるどす黒い血の塊が、事件の悲惨さを物語っていた。
- 血行不良の症状の一つに皮膚がどす黒くなり、皮膚をつまむと赤い色がなかなか引かないということがあります。
- 彼女は、自分ではそうしたくないと思っても、心の奥底にどす黒い感情が湧き上がってくるのをどうすることも出来なかった。
- インタビュー記事では、彼女がどす黒い欲望を抱くようになった経緯を赤裸々に語っている。
- 彼がたまに見せる残虐性(ざんぎゃくせい)や冷酷な態度から、彼は心の底にどす黒いものを隠し持っているような気がする。
「どす黒い」の類語
人の内面に持っている「どす黒い感情」「悪意」「陰険(いんけん)」「性悪(しょうわる)」といった意味を持つ類語、関連語。
「邪悪」
「邪悪(じゃあく)」とは、「心がねじ曲がっていて悪意に満ちていること。そのさま」という意味です。
「邪悪」の「邪」は「よこしま」とも読みます。「道から外れていること。不正」という意味で、「邪な心」「邪な考え」などの言い回しでよく使われています。また、「悪」は「正しくないこと。わるいこと。不正」を意味する言葉です。
【例文】
- 彼は性根が邪悪である為、相手の弱みを見つけたら陰謀を企み、策を持って相手を叩きのめすことに快感を感じていた。
- 不正な権謀術策(けんぼうじゅつさく)でトップに上り詰めた男の邪悪な顔には、どこか狡(ずる)賢さがある。
「腹黒い」
「腹黒(はらぐろ)い」とは、「心がねじくれ悪い考えを持っている」というような意味です。口では調子のいいことを言っていても、心の中では別の悪い事を考えている、裏で悪だくみする、悪事を考える人を指します。
【例文】
- 彼女には男性にどう思われているかが最も重要で、男性がいると途端に態度を変える腹黒い女です。
- 腹黒い人の特徴に、人の秘密を簡単に話してしまったり、自分より立場の上の人の前では普段以上にいい顔を見せるといったことがあります。