「売り言葉に買い言葉」とは?
「売り言葉に買い言葉(うりことばにかいことば)」とは、相手がけんか腰で言った言葉、相手が言った乱暴な言葉に対して、同じような言葉で言い返してしまうことをたとえたことわざです。
「売り言葉」は、わざと相手を挑発してけんかをしかける、つまりけんかを「売る」ような言葉のことで、「買い言葉」は、その売り言葉に乗ってやり返す、つまりけんかを「買う」ような言葉のことを言います。
「売り言葉に買い言葉」使い方
「売り言葉に買い言葉」が使われるのは口げんかの場面でしょう。けんかになった背景はさまざまでしょうが、口論中の一言を聞き逃すことができずに、言わなくてもいいようなことまで言ってしまう状況に用いられます。
【例文】
- 昨日は、つい売り言葉に買い言葉で言い過ぎてしまった。本心から出た言葉じゃないんだ。どうか許してほしい。
- あのミスの発端は彼なのだから、彼がきちんと反省しなければならないという意見ももっともだ。でも、あんなふうに上司が感情に任せてひどい言葉で叱責したら、つい売り言葉に買い言葉で言い返してしまった彼の気持ちもわからなくはない。
- 最初は軽い冗談のつもりだったのに、つい売り言葉に買い言葉でヒートアップしてしまい、最後には殴り合いのけんかになってしまった。
「売り言葉に買い言葉」類語
ああ言えばこう言う
「ああ言えばこう言う」は、相手が言った意見や忠告に対し、いちいち反対したり屁理屈を言ったりして、素直に聞かない様子を表すことわざです。似たことわざに、次のようなものがあります。
- 右と言えば左
- 山と言えば川
- 西と言えば東と言う
【例文】
定期テストも近いのにずっとスマホに夢中になっている長男に、いろいろ意見をしたのだが、ああ言えばこう言うでまったく机に向かう気配がない。
「売り言葉に買い言葉」関連語
柳に風
「柳に風(やなぎにかぜ)」は、柳の葉が風に逆らわずにそよぐように、相手の強い言葉や態度に逆らわずにさらりとかわす様子を表したことわざです。
「売り言葉に買い言葉」は相手の言葉を受け入れられずに言い返しますが、「柳に風」は反論せずにあしらうという、反対の態度を表しています。
【例文】
Aさんは、お客さんからの理不尽なクレームをいつも柳に風と受け流していて、その様子はみんなの尊敬の的だった。
茶碗を投げれば綿で抱えよ
「茶碗を投げれば綿で抱えよ(ちゃわんをなげればわたでかかえよ)」は、向こうが強く出てきたときには、やんわりと受け流すことが賢い、という意味のことわざです。茶碗を投げつけられても綿で抱えれば割れない、ということからこのように言われます。
【例文】
課長が怒って何か言ってきても八つ当たりのことが多いんだから、正面から受けていたらストレスたまるよ。「茶碗を投げれば綿で抱えよ」くらいの気持ちでいたほうがいいよ。
「売り言葉に買い言葉」英語での表現
英語で「売り言葉に買い言葉」という意味で使われるのが、「tit for tat」です。「tit for tat」は「売り言葉に買い言葉」「しっぺ返し」「仕返し」などの意味を持っています。
このイディオムと動詞giveを組み合わせて、「売り言葉に買い言葉を言う」というように使うことができます。
【例文】
- You know tit for tat won’t solve anything.(売り言葉に買い言葉では、何にも解決しないよね。)
- She gives tit for tat.(彼女は売り言葉に買い言葉を言う。)
他にも、次のような言い方ができます。
- the exchange of harsh words(暴言の言い合い・乱暴な言葉のやり取り=売り言葉に買い言葉)
- One ill word asks another.(意地悪な言葉は、他の意地悪な言葉を招く。=売り言葉に買い言葉)
「売り言葉に買い言葉」を避けるには
相手からもらったものと同じようなものを返したいと思う心理が、人間にはあるそうです。言葉なら、誉め言葉には誉め言葉を、ののしるような言葉にはののしるような言葉を返そうと考えるということです。
人間の心理とはいえ、できれば「売り言葉に買い言葉」といった状況は避けたいですよね。そんなときに有効なのが「Yes,but」です。相手の言うことをまずは「そうですね」と受け止めて、「でも」とつなげることで、否定的な言葉を和らげて伝えることができます。
そんなふうにできれば苦労はしない、と言う声も聞こえてきそうですね。でも、相手がヒートアップしているときに、一呼吸おいて冷静になろうとするだけでも、無用な衝突は避けられるのかもしれません。