「いずい」の意味
「いずい」は北海道や東北で使われている方言で、「なんとなく不快な」「しっくりこない」といった意味を持つ言葉です。とはいえ、「いずい」の意味は、地元の人でも一言で説明しきれないほど様々なニュアンスを持っていますので、それらについては後述します。
「いずい」の表記と発音
文字で書く場合、「いずい」は「いづい」と表記することもあります。また、方言といえばイントネーションが難しいこともありますね。「いずい」の場合は、「暑い」や「卵」と同じように、真ん中の「ず」にアクセントを置くのが正解です。
「いずい」の使い方
「いずい」はいろいろな場面で使われるので、この言葉を使い慣れていない人にとっては捉えにくいかもしれません。例えば、「新品の靴は少しいずいよね」であれば、新しい靴が自分の足に「フィットしていない・しっくりこない」状態を伝えています。
つまり、「いずい」は、おもに、身体に触れるものや肌で感じる空気に対して、「不快感はあるが大きな支障があるわけではない。かといって、快適とは言いがたい」といった曖昧な感覚を表現するときに使うのです。
次に、「いずい」の多彩なニュアンスの一部を例文で紹介しましょう。
「いずい」の例文
【例1】
- 例文:今日は風が気持ちいいけれど、目に砂が入ってきていずいわ。
- 意味:目に砂が入ったことで、目がゴロゴロする。とても気になる。
【例2】
- 例文:外も寒い季節になってきたから重ね着したけど、たごまっていずいわ。
- 意味:服がたごまって気持ちわるい。ゴソゴソする。(※たごまる:重ね着などした時に袖がくしゃくしゃになる。丸まる。)
【例3】
- 例文:「いずい」は標準語で何?と聞かれたが、うまく説明できなかった。今思えば、あの時の私が「いずい」だった。
- 意味:わかっていることをうまく伝えられなくて、ヤキモキする。すっきりしない。
【例4】
- 例文:私の用意した花瓶を見て、友達は「何かいずくね?」と言ってきた。
- 意味:どこか場違いな感じがして、落ち着かない。フィットしていない。
「いずい」のルーツ
北海道や東北で使われる「いずい」ですが、そのルーツは意外にも京都にあると言われています。室町時代の京都では、「怖い・恐ろしい」という意味の「えずい」が広く使われており、「えずい」が東北にわたって「いずい」になりました。
「えずい」はもともと、「身の毛がよだつほど怖い。胸がむかつくほど不快だ」という身体に即した意味が多く、「いずい」はその影響を受けたと考えられています。
ちなみに、現在でも西日本では「えずい」が使われています。たとえば、博多では、「えずがり」は「怖がりの人」という意味です。
「いずい」と似た意味の方言
【えんずえ】
「違和感がある。居心地が悪い」ことを表す宮城の方言で、「なんか目がえんずえや(なんか目がゴロゴロする)」のように使います。身体に接触したものに対して使うという点でも「いずい」と同じです。
【あずましくない】
北海道の方言で「落ち着かない。不快だ」という意味です。「あずましい」の否定形ですが、使用頻度が高いのは「あずましくない」の方です。「いずい」が身体的な不快感を表すのに対し、「あずましくない」は「隣の家の生活音のせいであずましくない」のような用法もあります。
【うざい】
「うっとうしい。不快だ」を意味する東京の多摩地区の方言です。「うざい(ウザイ)」は現在では全国で使われており、「うざっ。うぜー」のようにも形を変えています。「いずい」と異なり、「あいつ、マジうぜー」のように人に対して使われることもあります。
「いずい」が作中に出てくるマンガ:『ハイキュー!!』
高校バレー部員の活躍を描いた人気マンガ『ハイキュー!!』の舞台は仙台です。キャラクタたちは仙台弁を使っており、「いずい」はもちろん、次のような方言が登場します。
【だべ】
「~だろ」という意味です。「おまえだべ」(おまえだろ)や「そうだべ」(そうだろ)のように連語として用いられます。仙台地方以外にも、北関東や神奈川などでもよく耳にする言葉です。
【おがったね】
「おがる」は「育つ」ことを指すので、「おおきくなったね」という意味です。また、「おがったごだ」も「おおきくなったなぁ」のように使うこともあります。