「取りざたされる」とは
「取りざたされる」は、「取り沙汰される」と書き、「世間で話題にされること。うわさされること。話題を取り上げて処理されること」と言う意味があります。
「沙汰(さた)」と聞くと「地獄の沙汰も金次第」とか「警察沙汰(けいさつざた)」といった表現をよく見聞きしますが、「沙汰」とはどういうことなのでしょう。
「沙汰」とは
「沙」の字義
「沙」は、音読みで「サ・シャ」、訓読みで「すな・まさご・みぎわ・よな-げる」と読みます。意味は以下の通りで、「沙汰」の「沙」は3の意味です。
- すな。まさご(小さい石や砂)。
- みぎわ(水際)。水辺の砂地。
- 細かい物をざるなどに入れて、ざるを水中でゆすって必要なものをより分ける(よなげる)こと。より分ける:「沙汰」
「汰」の字義
「汰」は、音読みで「タ・タイ」、訓読みで「よな-げる。にご-る。おご-る」と読みます。意味は以下の通りで、「沙汰」の「汰」は1の意味です。
- よなげる。より分ける。水で洗って選り分ける:「淘汰」
- 濁る(にごる)。行動や精神が清廉(せいれん)でないこと。
- 奢る(おごる):「汰侈(たし/たいし:分不相応におごること)」
「沙汰」とは
上記のように「沙汰」は、「より分ける。不要なものを取り除く」ことを表す二つの漢字が合わさった言葉で、以下のような意味を持つ言葉です。
- 水でゆすって砂金や米などの砂をとり除くこと。物の粗密を選りわけること。淘汰。
- 物事の是非善悪を論じて判断すること。評定。裁断。訴訟:「地獄の沙汰も金次第」など
- 政務を裁断・処理すること(主君または奉行などの指示・指図)。知らせ。便り:「追って沙汰あるまで~」「音沙汰(おとさた)」など
- 評判。うわさする。話題にする:「世間で沙汰する」
- 行い。しわざ。事件。「正気の沙汰。裁判沙汰。刃傷(にんじょう)沙汰」など
「取りざたされる」という場合の「沙汰」は4の意味ですから、「取りざたされる」は「話題に取り上げられる」ことを表すのです。
「取りざたされる」の使い方
「取りざたされる」は、上記のように「沙汰」という言葉で表される「うわさ」や「話題」がメディアなどに取り上げられて人々の耳目に触れるような場合に使われます。
【例文】
- 地震の被害を受けた原発の放射能漏れが取りざたされている。
- 経済界では大物経済人の後継者問題が取りざたされて、様々な憶測(おくそく)が飛び交っている。
- 作家のM氏は、毎年のようにノーベル文学賞の候補者に取りざたされているが、まだ受賞していない。
- 世界中が感染症の脅威におびえる中、一部の国では人種差別による暴力が取りざたされるようになった。
「取りざたされる」の類語
「人口に膾炙する」
「人口に膾炙する(じんこうにかいしゃする)」は、耳慣れない言葉かもしれませんが、「世間に広く知られてもてはやされること」を意味しています。
「膾炙」は、「膾(なます)や炙(あぶった肉)」のことで、それらの食べ物が多くの人に好まれるところから、「広く世間に知られる」ことを意味し、「人口に膾炙する」は、人の口、つまり、話題になることで強調されています。
「広く知られる」点は同じですが、「取りざたされる」には、「問題にする。非難の対象」というニュアンスがあり、この点では異なります。
【例文】
- シャーロック・ホームズはイギリスの作家コナン・ドイルが生み出した探偵だが、彼の名は多くの国で人口に膾炙され、探偵の代名詞のようになっている。
- 「インスタ映え」という言葉が人口に膾炙しているそうだが、私には馴染みのない言葉だ。
「口の端に上る」
「口の端に上る(くちのはにのぼる)」は、「うわさになる。話題になる」ということです。「口の端」は「言葉のはし」、つまり「話題になること」を表しています。この言葉にも「問題にする。非難の対象」というニュアンスはありません。
【例文】
- アイドルの離婚騒動が世間の人の口の端に上り、SNSでも拡散している。
- ウイルス感染の影響で、日本では9月入学の話が人々の口の端に上るようになった。