「抉る」とは?
「抉る」(えぐ-る)とは、「刃物などを突き、まわして、中のものをくりぬく」動作を表す言葉です。
ここから派生して、「抉る」は具体的な動作以外にも「相手の弱い部分を突いて衝動や苦痛を与える」や「物事の隠された真実などを容赦なく追及する」という意味も持っています。
さらに、「普通のやり方ではない、工夫を凝らして何かする」という意味もありますが、こちらは現代ではあまり使われていません。
異なる表記・読み方
「抉る」は、「刳る」や「剔る」とも書きます。また、いずれも「えぐる」の他に意味から読みをとって「くじる」や「こじる」と読むこともありますが、「抉る」(えぐ-る)という表記・読みがもっとも一般的です。
それぞれの字の意味は、以下の通り。
- 「抉」…えぐる、こじる、ほじくりだす。
- 「刳」…えぐる、くりぬく、切り開く。
- 「剔」…えぐる、えぐり取る、除く、(毛髪を)剃る。
「抉る」の使い方
「抉る」は、何らかの物体・概念を対象とし、その表層を突いて内部まで貫き、さらにぐるりと回すようなイメージでそこにある核心的な何かを取り出す/大きな刺激を与えることを指して使います。
実体あるものの例えでわかりやすいのは「りんごの芯を抉る」でしょう。りんごの芯を取り除くには、何かを(包丁など)深く突き刺し、芯を捉え、回転も加えながら引き抜く必要があります。これが「抉る」です。
「心」「事件の真相」など非実体のものに使う場合にも、上記と同様、大きなエネルギーを使って対象の内部まで侵襲(しんしゅう)し、核心へと至るイメージは変わりません。場合によってはかなり破壊的・暴力的なイメージを伴う点に留意しましょう。
例文
- 桃はおいしいけど、あらかじめ芯を抉り取るのがちょっと手間だね。
- ボクサーAの放ったボディブローは、ボクサーBの脇腹を深々と抉った。(※実際に拳が脇腹を貫通したのではなく、衝撃力が内部を抉るニュアンス)
- 何気ない加害者の一言に、彼女は胸を抉られたかのような驚きと悲しみに襲われた。
- そのジャーナリストの告発は、政府がひた隠しにしていた事件の核心を深々と抉った。
「抉る」の類語
「刳り貫く」
「刳り貫く」(くりぬく)は、「えぐって穴をあける」「えぐって中身を取り出す」という意味の言葉です。意味の説明に「えぐる」とある通り、「抉る」とよく似た言葉です。
ただ、「刳り貫く」は「抉る」と比べると明確に物理的な力を働かせるイメージが強く、比喩的な表現も可能ではあるものの、基本は「実際に穴を開ける」ところを想像して使うとよいでしょう。
【例文】
- ハロウィンのかぼちゃランタン作りのため、大量のかぼちゃの身を刳り貫く仕事をする。
- この地方では、岩盤を刳り貫いて作られた洞穴的な住居が多くみられる。
「切り抜く」
「切り抜く」(きりぬく)とは、「切って抜き取る」意であり、対象の一部分を取り出すというニュアンスがあります。
「抉る」に比べると「突く」や「回転を加える」意がないぶんやや大人しいイメージであり、また人間の心など抽象的な対象物にはあまり使用されません。「切り取る」とすると、さらに大人しいイメージになります。
【例文】
- 気になる新聞記事を切り抜いておく。
- 窓枠によって切り抜かれた青空が美しい。
「穿つ」
「穿つ」(うがつ)とは、「穴をあける」が基本的な意味ですが、そこから派生して「詮索(せんさく)する」「普通は知られていないところをあばく」という意味も持っています。
主に「ここだ」と思ったところにピンポイントで穴を開けるニュアンスであり、核心へ至るニュアンスが強い「抉る」と似た使い方ができます。
【例文】
- 大地の真ん中に、深々と穿たれた穴が開いている。
- 突然、胸を刃物で穿たれたような痛みが走った。