「穿つ」とは
「穿つ」は「うがつ」と読みます。アクセントは真ん中の「が」につけます。古典では濁らずに「うかつ」と読むことも。
「穿」という漢字は「穴」と「牙」からできています。牙で穴を掘っている様子をそのまま文字にした会意文字です。
「穿つ」の意味と使い方
「穿つ」は以下のような5つの意味を持つ言葉です。後半の3つは現代ではあまり使われないので、ここでは最初の2つを主に取り扱います。
- 穴をあける、突き通す。あるいは貫通する。
- 本質を見抜く、的確に表す。
- 袴や履物を身に着ける。現代での「履く」の意味。
- 通り抜ける、押し進む。
- 斬新なことや奇抜なことをする。
穴をあける
「穿つ」の基本的な意味は穴をあけることです。「掘る」と大まかな意味は同じです。ただし、「掘る」は除かれるものに着目していても使えますが、「穿つ」は穴そのものに着目している時にしか使えません。
たとえば、「土を掘る」と書いた場合、地面に穴を空けることが目的かも知れませんし、何かの実験用に「土」が必要なのかも知れません。このどちらの状況でも「土を掘る」という表現は使うことができます。
しかし、「土を穿つ」と書くと目的が「穴を空けること」に限定され、「土」が欲しい場合にはこの表現を使うことができません。「掘る」の方が幅広く使える言葉です。
また、比喩的に欠員や欠損ができることも「穴が空く」と言いますが、この意味での「穴が空く」も「穿つ」で表すことができます。「穴を穿つ」や「穿たれた空白」のような言い回しですね。
【例文】
- 隣町まで通じるトンネルを穿つ。
- ミステリーサークルの中心には巨大な穴が穿たれていた。
- 穿たれた穴をいったいどうやって埋めようか。
的確にとらえる
皆さんは「穿った見方」や「穿った意見」というセリフを聞いたことがありませんか?もし聞いたことがあるのなら、どんな意味だと思っていましたか?
「穿つ」には穴を掘ること以外にも大切な意味があります。それが、物事の本質を的確にとらえることです。深く考えたり追及したりすることを「掘り下げる」と言いますが、この「掘る」を「穿つ」で表現しているのですね。
これがわかると、「穿った意見」は的確な意見という意味だと分かります。「的を射た意見」と言い換えることもできます。誤解されがちですが、ひねくれて斜に構えた意見というわけではありません。
【例文】
- 君にしては珍しく、穿った意見だね。
- 穿った見方をすると、これは人目をそらすための陽動だろう。
- 真実を穿つのが我々の使命だ。
「穿つ」を含むことわざ
雨だれ石を穿つ
「雨だれ石を穿つ」とは、小さな努力であってもコツコツと積み重ねていけばやがて成功するという意味のことわざです。『漢書(かんじょ)』に書かれている説話に由来します。
「雨だれ」とは軒先からポタポタと滴り落ちる雨水です。雨水が一滴、石の上に落ちたところで穴なんてあきません。しかし、それが何度も何度も気の遠くなるほどの回数繰り返されればいつかは穴が空くとのこと。
『漢書』では中国の霊峰・泰山の雨は石に穴をあけるとされていますが、実際に起こるのでしょうか?雨による石や地形の変化として風化や浸食という現象が知られています。そのため、おそらく起こると考えられています。とはいえ、時間がかかりすぎるので実証は難しそうです。
微に入り細を穿つ
「微に入り細を穿つ(びにいりさいをうがつ)」とは、細かいところまで配慮が行き届いているという意味です。
「微」も「細」も小さくて細かなことです。非常に小さな、物事の些細なところまで入り込んで手を入れているという称賛の言葉です。「きめ細かな配慮」や「痒い所に手が届く」とも言えますね。