「堪忍袋の緒が切れる」とは?
「堪忍袋の緒が切れる(かんにんぶくろのおがきれる)」とは、もうそれ以上我慢することができずに、抑えきれない怒りを爆発させてしまうことを言うことわざです。
ただ怒りを爆発させることではなく、「こらえきれずに」という部分が重要な点でしょう。「堪忍袋」が何を指すのかについては、次項で解説していきます。
「堪忍袋」とは
「堪忍」には、以下の意味があります。
- 怒っている気持ちをじっと抑えて、相手の過ちを許すこと。勘弁。
- 直接的な痛みや苦しみを我慢すること。忍耐。
- 生活にかかるお金や経済力のこと。
「堪忍袋」には、2の意味が反映されています。すなわち「堪忍袋」とは、怒りの気持ちをこらえる心の広さを、袋にたとえたものです。
また、七福神の布袋さまが持っている大きな袋を堪忍袋と呼ぶこともあります。布袋さまは慈悲深く、我慢強いので、人々の我慢している気持ち、つらい心を袋の中に入れてしまうと言われています。一方で、袋の中には人々の感謝や慈悲の心、宝物が詰まっているとする教えもあります。
堪忍袋の「尾」は誤り
「堪忍袋の尾が切れる」と勘違いしている人もいるかもしれませんね。堪忍袋の(お)とは、袋の口をしばってとじていた「ひも」、つまり「緒」のことです。ふくらんだ袋の力に耐え切れなくなって切れる様子を「堪忍袋の緒が切れる」と表現しています。
「堪忍袋の緒が切れる」使い方
「堪忍袋の緒が切れる」は、ただ怒っていることを例えたものではないでしょう。これまで何度も怒りたくなるような場面に遭遇しつつも、忍耐強く我慢を続けた人が、あるタイミングで「もうこらえきれない!」と怒りの気持ちを爆発させるようなイメージです。
例文
- 宿題を後回しにしてばかりの子どもに、とうとう私の堪忍袋の緒が切れた。
- 彼の浮気は何度もあったし、そのたびに許してきたけれど、今回ばかりは堪忍袋の緒が切れそうだ。
- 温厚な上司だが、ついに堪忍袋の緒が切れ、遅刻を繰り返す新人を一喝した。
「堪忍袋の緒が切れる」類語
仏の顔も三度
「仏の顔も三度(ほとけのかおもさんど)」は、どんなに心の広い慈悲深い人でも、何度も乱暴なことや無礼なことをされれば怒る、という意味のことわざです。
「三度」は顔を三度もなでられる、という意味で、温和な仏さまでも三度も顔をなでられれば腹を立ててしまう、ということです。「仏の顔も三度撫(な)づれば腹立つる」を省略しています。同じ意味で、「地蔵の顔も三度」ということわざもあります。
【例文】
Aさんは、先日の忘年会でまた酒に失敗してとうとう上司を怒らせてしまったらしい。仏の顔も三度だよね。
兎も七日なぶれば噛みつく
「兎も七日なぶれば噛みつく(うさぎもなぬかなぶればかみつく)」は、どんなにおとなしい人でもたびたび失礼なことをされて限度を超えてしまえば怒り出す、という意味のことわざです。
うさぎはそのイメージから、おとなしい人をたとえています。また、「なぶる」は、いじめる、からかってばかにするという意味です。
【例文】
新学期早々、変なニックネームをつけてひと月もいじれば、物静かなあの子もさすがに怒るよ。兎も七日なぶれば噛みつく、ということだね。
「堪忍袋の緒が切れる」英語での表現
「堪忍袋」そのものに当たる英語表現はありませんが、近い意味を表すことはできます。例えば「patience」は、「忍耐、我慢」を表す単語です。この単語を使って、「堪忍袋の緒が切れる」を表してみましょう。
【例】
- reach the limit of one’s patience(我慢の限界に達する)
- My patience has come to the breaking point.(私の我慢の限界点がきた)
- My patience has run out.(私の忍耐力は尽きてしまった)
また、「This(That) is the last straw(我慢の限界を超える、我慢ならない=堪忍袋の緒が切れる)」と表すこともできます。
語源となった「The last straw that broke the camel’s back」は、「たとえ軽いわら一本であっても、限度を超えればラクダの背を折ってしまう」という意味のことわざです。