「んほぉ」とは?
「んほぉ」とは、インターネットスラングの一種で、自分のお気に入りの(ひいきしている)人や物事に対して、「たまらなく好き」「是非を越えてそれを優先するほどの興奮」を表す感嘆表現です。
「んほぉ」そのものは、興奮のあまり鼻から息が抜けたばかりか、喉からも声が漏れてしまうほどの興奮を表しています。
「んほぉ」の元ネタ
「んほぉ」の元ネタに定説がありません。元ネタと言われるもののひとつには、アダルトゲームやアダルトコミックなどで用いられる喘ぎ声の表現があります。
たしかに、現在では「んほぉ」がアダルトコンテンツとは無関係にSNSなどで用いられることもあります。しかし、元ネタとされるものの中にはアダルトネタもあるという点において、使う場所や相手は選んだ方が良さそうです。
また、元ネタに挙げられるものとして、とあるゲームをめぐる炎上案件(大火事のような騒ぎとなること)があります。初出かどうかはともかく、「んほぉ」が広く用いられるきっかけとなったのはこの案件です。
「んほぉ」が広まったきっかけ
「んほぉ」というスラングは、広まるきっかけとなった次の炎上案件のパロディとして使われることがほとんどです。そこで、まず、この炎上案件について解説します。
『テイルズオブゼスティリア(ToZ)』
「んほぉ」というスラングは、2015年に発売されたバンダイナムコから発売されたゲーム『テイルズオブゼスティリア』(以下ToZ)をめぐるとある騒動から広まりました。
当時、『ToZ』は人気シリーズ「テイルズ」の最新作であり、しかもシリーズの「20週年記念作品」と銘打たれてファンを中心に大きな話題と期待を集めていました。
しかし、発売後間もなく、ゲームを遊んだユーザーの間からは『ToZ』についての様々な問題や批判が噴出します。その代表例が、「アリーシャ離脱問題」です。
アリーシャ離脱問題
『ToZ』には「アリーシャ」という女性キャラクターがおり、発売前の広告や宣伝でも主人公と二人だけで肩を並べるなど、誰が見てもほぼメインヒロインと言う足るイメージを担っていました。
実際、アリーシャはゲーム中でも序盤に加入し、主人公に比肩(ひけん)しうる重要な使命や背景を背負ったキャラクターでした。ところが、彼女は物語が中盤に差し掛かる頃にパーティから離脱してしまうのです。
そこに納得できる理由があれば何の問題もなかったでしょう。しかし、主人公が「アリーシャは真の仲間じゃない(から仕方がない)」と発言するなど、彼女を理不尽に突き放す展開に多くのユーザーが疑問と不満を投げかけました。
ヒロインが「ロゼ」に交代
その後、アリーシャに代わって「真の仲間」としてパーティに加入したのは「ロゼ」というキャラクターでした。ロゼはシナリオの根本設定を無視できるほどの特権的な才能を持っており、以降、メインヒロインとして物語を牽引します。
このヒロイン交代劇は、アリーシャをヒロインだと思って物語を追っていた大多数のプレイヤーたちに少なからぬ衝撃を与えたのです。また、不自然なまでに優遇されたロゼの存在もあって「なぜこんなことが起こったのか?」という不信感を抱かせました。
制作側は「アリーシャをヒロインと告知したことはない」と申し開きしましたが、ユーザーを納得させるには至らず、やがて大きな火種となって「炎上」したのです。この事件は、今なおゲーム史に残る不祥事として取り上げられることがあります。
ヒロイン交代にまつわる憶測
理不尽なヒロイン交代劇について、もっともらしい憶測として広まったのが、「プロデューサーがロゼを演じた声優を気に入っており、(本来その予定はなかったのに)無理やりヒロインとしてシナリオにねじ込んだから」という説でした。
この憶測がネットユーザーの間で徐々に肉付けされつつ真実味を増し、ついには、プロデューサーが「んほぉ~この声優たまんねぇ!」と独善的な好みでシナリオを改変したことを妄想するテキストが作られました。これが「んほぉ」が広まったきっかけです。
あくまでも憶測に基づいたネットユーザーの妄想文章であり、事実である証拠は何一つありません。しかし、「本当に言ってそう(ありそう)」という勝手なイメージから、「んほぉ」というフレーズはネット上で多方に広がっていったのです。
「んほぉ」の使い方
「んほぉ」は、SNSにおける会話ネタとして用いられることが多いようです。その会話例は次のようなパターンがあります。ただし、元ネタの項目で説明したとおり、使う場所や相手には気をつけた方が良いでしょう。
炎上案件に類するネタとして発言する場合
「んほぉ」は、正式には、上記の炎上案件にならって「んほぉ~この〇〇たまんねぇ~」という形で使います。「〇〇」は原典では「声優」でしたが、流用ネタとして、発言者の個人的な好みであれば何でも可です。
(映画監督)
よし!撮影もほぼ終わって作品が形になってきたな!
(プロデューサー)
んほぉ~この新人女優たまんねぇ~。(※この女優を無理やり映画に登場させる流れ)
順調な流れが台無しになる場合
上記のネタ発言以外にも、「それまで順調に、理想的に物事が進んでいたのに、権威ある人の『んほぉ』によってすべてが台無しになる」という絶望的な状況、およびそれを作り出す「伏線」として使うこともあります。
権威ある(そしてしばしば独善的で無能な)人の余計な一手が、築き上げてきたものを何もかもダメにしてしまうという失敗談の類型は古今東西に見られます。「んほぉ」は、その現代ネットスラング版といえるでしょう。
(製造者)
この新製品もテストを重ねてだいぶ完成が近づいてきたな!
(無能な上司)
んほぉ~この新素材たまんねぇ~!(※新素材を使った新製品を一から作り直す流れ)
逆説的に用いる場合
原典を継承しつつも、派生的な意味や逆説的な意味が次々生み出されるのは、流行廃りのサイクルが早いネットスラングならではの特徴です。
「んほぉ」の逆説的に用いると、「行き詰まっていた物事、あるいは悪化しつつあった物事が、ある人物の何気ない一言によって一気に好転する」という状況を表すこともできます。
ポイントは、示唆を与えるといった意図のある発言ではなく、「何気ない一言(独善的な一言)」というところです。
(小説家)
だめだ、行き詰まった…何か面白いアイディアはないか…。
(友人)
んほぉ~このテレビドラマたまんねぇ~。(※何気ない一言が小説家にアイディアをもたらして、状況を打開する流れ)