「ミミック」とは?
「ミミック」(mimic)とは、「まねをする」を本義とする言葉です。ここから、動詞では「まねをしてからかう、笑わせる」「擬態(ぎたい)する」、形容詞では「偽の、模倣の、見せかけの」、名詞では「物真似する人、道化役者」といった意味を持ちます。
上記の意味から派生して、「ミミック」は「宝箱などに擬態した架空のモンスター(怪物)」の名称としても広く知られています。特に、ゲーム好きな方であればこちらのほうが親しみがあるかもしれません。
本記事では、ゲーム用語、生物学、文化と遊びの観点から「ミミック」について解説します。
ゲームに登場する「ミミック」
『ドラゴンクエスト3』(DQ3)の「ミミック」
「宝箱などに擬態した架空のモンスター」としての「ミミック」の初出は、有名なRPGゲームシリーズである『ドラゴンクエスト3』(DQ3)です。
洞窟内などに宝箱として配置され、プレイヤーが開けようとすると正体を現して襲い掛かってくるトラップモンスターとして登場しました。登場時期の割に非常に強力で、即死魔法を連発してくるなど、多くのユーザーに強烈な印象を与えました。
以降のシリーズにもほとんど皆勤賞で登場し、「人食い箱」や「パンドラボックス」などの亜種(下位種・上位種)も存在します。ゲーム内の名前は異なりますが、壺に潜む怪物なども「ミミック」と呼ばれることがあります。
その他のゲーム
『ドラゴンクエスト』シリーズ以外でも、宝箱の中に潜んでいたり、箱そのものや宝物・道具に擬態しているモンスターは総じて「ミミック」と呼ばれることがあり、RPGを中心にさまざまなゲームに登場します。
名称が別についている場合でも、上記の性質を満たすモンスターのことをプレイヤー側が俗称で「ミミック」と呼ぶことが多く、慣用名として定着していると言ってもよいでしょう。
同義語的に、「シェイプシフター」(姿を変えるもの、変身するもの)という語が用いられることもあります。
用例
- 「宝箱はミミックだった!」(宝箱を開けた時、戦闘突入前のメッセージ)
- ダンジョンでうっかりミミックの入った宝箱を開けてしまい、全体即死魔法でパーティーが半壊した。
- 宝箱を開ける前にミミックがどうかを確かめるには、専用の呪文を唱えるとよい。
生物学的な「ミミック」
自然界では、自分の姿を他の物に見せかける「擬態」の特性や能力を持つ生物が少なくありません。「ミミック」とはこの「擬態」のことです。(「カモフラージュ」ともいいますが、こちらは「隠蔽」に重きを置いた用語のようです)
例えば、その名もそのまま「ミミックオクトパス」と呼ばれるタコの一種は、タコでありながら腕の形を巧みに変えることで、ウミヘビ、カレイ、クラゲ、ヒトデなど多様な生物種に擬態し、それによって外的から身を守っていると考えられています。
枯れ葉に似た外見を持つコノハチョウや、ハチに似たアブ、体色を変化させて景色に溶け込むカメレオンなども、「ミミック」の代表例といえるでしょう。擬態は、生物の進化を研究する上での重要な特徴です。
文化・遊びとしての「ミミック」
「ものまね」が芸のひとつとして認知され、「ものまね芸人」という用語まで存在することからもわかるように、(人などの)まねをすること=「ミミック」は文化や笑いを誘う遊びとして認知されています。
「ものまね」は、端的に言えば、それを行う者が「他のものになったと信じる遊び」のことです。子供が変身ヒーローに憧れるのも、映画で俳優が「別の人物になりきって演技すること」に魅力を感じるのも、大枠では似ていますね。
詳しい理由はわかっていませんが、人間には、この「ミミック」(ものまね、擬態)という行いに神秘的な面白さを感じる本能のようなものが備わっている、といえるのかもしれません。