「恵体」の意味
「恵体」(めぐたい/けいたい/えたい)は、恰幅の良い体格の持ち主を表します。主にスポーツ選手、特に野球選手の体つきを指すことが多いです。昔からある熟語ではなく、2010年くらいからインターネットの掲示板で使われるようになったネットスラングに当たります。
もとは「恵体」で全体的に肉付きのよいがっしりとした体型のホームランバッター(強打者)を表しましたが、時間が経つうちに意味が広がりました。
現在では、背が高い人や筋肉質の人にも恵体を使ったり、丸みのある体つきをした女性の体型を指したりすることもあります。
「恵体」の読み方
「恵体」は熟語というよりも言葉を縮めた形です。もともとは「恵まれた体格」(めぐまれたたいかく)のことをいいます。語句の漢字2文字を取って「恵体」となり、読みもそのまま「めぐたい」と読む方が多数派です。
ただし、訓読みの「めぐ」と音読みの「たい」の組み合わせで違和感を覚え、両方とも音読みの「えたい」・「けいたい」のいずれかがふさわしいのではともいわれています。
将来、正式な言葉として定着した場合、音読みのうちのどちらかが採用される可能性も捨てきれません。
「恵体」の使い方
「恵体」は、普段の話し言葉、書き言葉ではほとんど使われません。主にインターネットの書き込みやSNSで用いられますが、近年では漫画のセリフでも体格を表す意味で使われるなど、広がりを見せています。
「恵体」が当てはめられる例
「恵体」を現在(2020年)の野球選手で例えると、埼玉西武ライオンズの中村剛也(なかむらたけや)選手、山川穂高(やまかわほたか)選手のような強打者で恰幅の良い選手が該当します。
長身で体を鍛えている均整の取れた筋肉質の選手の例では、野手と投手の二刀流、メジャーリーグで活躍している大谷翔平(おおたにしょうへい)選手が挙げられます。
基本的に男性の体型について使われる言葉ですが、女性の体型を「恵体」という場合、魅力的で色っぽいと褒める意味合いです。
「恵体」の例文
- あの選手は恵体でありながら、盗塁も上手いんだね。
- 肩幅ががっちりとした恵体になれるよう、トレーニングを欠かさずに続けている。
- 女性に「恵体だね」と褒めるとセクハラになる場合があるから注意してね。
「恵体」の由来
「恵体」は縮約された語で、元の形は「恵体糞打」(めぐたいくそだ・めぐたいふんだ)です。これは「恵まれた体なのに糞みたいな打球(にしかならない)」という不名誉な言い回しが縮まって四字熟語のような形になったものです。
畠山和洋選手
「恵体糞打」のもととなった人物は、東京ヤクルトスワローズの一塁手、畠山和洋(現・東京ヤクルトスワローズ二軍打撃コーチ)選手です。
畠山選手は恰幅が良く武士を思わせる風貌で、長打を期待するファンが多かったものの得点のチャンスでなかなかヒットが出ませんでした。
「糞みたいな打球」とは、進塁できないゴロやフライなど、得点に結びつかない打球を貶めて「糞」と表現し、揶揄する意味で使われました。しかし、2000年に入団して10年が経過し、シーズン途中から畠山選手の活躍が目立つようになっていきます。
2010年畠山選手の活躍とスワローズの快進撃
2010年スワローズはシーズン当初から苦戦を強いられました(5月27日時点の成績:13勝32敗1分)。5月末に高田繁監督が責任を取って休養し、小川淳司(現・東京ヤクルトスワローズGM)ヘッドコーチが監督代行に就任しました。
就任早々、小川監督代行は二軍時代から指導してきた畠山選手を4番打者に大抜擢します。ホームランを狙うようアドバイスし、畠山選手は見事に期待に応えました。チームもセントラル・リーグ断トツの最下位から4位(首位と6.5ゲーム差)にまで巻き返す快進撃を見せます。
スワローズの快進撃で「メークミルミル」(「メーク」は英語の「make」作る、「ミルミル」は親会社の乳飲料、「奇跡」を表す英語「miracle」とかけている)という言葉が生まれたほどでした。
「恵体豪打」
畠山選手は翌年以降も活躍し、2015年には打点王に輝きました。畠山選手が活躍してからは「恵体豪打」(めぐたいごうだ)「恵まれた体格から豪快な打球(を飛ばす)」という意味の言葉も誕生しました。