「初心忘れるべからず」の意味
人によっては「初心忘るべからず」や「初心忘るるべからず」と使いますが、語源や世間一般を考慮に入れてこの記事では「初心忘れるべからず」で統一させて頂きます。
「初心忘れるべからず」は、「慢心(まんしん)した時にこそ、物事を始めた頃の初心に戻って、新鮮な気持ちで物事に取り組もう」という意味で、マンネリになっている自分や環境を打破する時に使われることわざです。
一般的な解釈はここまでですが、しかし、語源を辿っていくとさらに深い意味合いがあります。
語源
「初心忘れるべからず」の語源は、室町時代の能役者であり、能の作者であった父・観阿弥(かんあみ)が大成した能を、幽玄の能として完成させた世阿弥(ぜあみ)が晩年に残した『花鏡』にあります。『花鏡』には、3つの初心について記されています。
【解釈】
ここでいう「初心」とは「未熟だった頃に味わった気持ち」を表しています。
- 是非初心忘るべからず:若い頃の未熟な芸を忘れてしまっては今後の上達は無い。常に初心を忘れずに失敗を糧にしていく必要がある。
- 時々の初心忘るべからず:その場しのぎで身につけた技術は何も残らない。若い頃から晩年に至るまで身につけた芸それぞれの初心を忘れずに入れば、そのうち芸に味が出てくる。
- 老後の初心忘るべからず:年を取ったからといって「もういい」という事はない。高齢になってからも初めて出会う物事には初心を持って乗り越えなければならない。
このように「初心忘れるべからず」に共通する意味は、「いつ何時も初心を忘れることなく、チャレンジ精神を持って物事に取り組もう」という心構えです。これこそが本来の意味になります。
「初心忘れるべからず」の使い方
- 最近難しいプロジェクトを任されるようになってきたけど「初心忘れるべからず」の精神で乗り越えてみせる。
- 毎日同じことの繰り返しで参ってきたので「初心忘れるべからず」で新しい勉強を始めた。
- 仕事をリタイアした今こそ「初心忘れるべからず」という言葉の通り色んなことにチャレンジしよう。
「初心忘れるべからず」の類語
「原点回帰」
「原点回帰(げんてんかいき)」は、「原点」と「回帰」の2つの熟語が合わさった四字熟語です。「原点」は、「根源の地点。出発点」、「回帰」は、「一周してもとへ帰ること。繰り返すこと」という意味があります。
つまり「原点回帰」は、「基本に戻る。初めての気持ちを思い返す」といった意味になります。何かが原因で悩んだり、自分の進む道に疑問を持った時などに使う言葉です。
【例文】
- 色んな部署で色んな人と交流するうちに原点回帰、自分のやりたい事はやはりこれだった。
- 難しい問題にぶつかった時、私は必ず原点回帰するようにして解決に導いている。
「初志貫徹」
「初志貫徹(しょしかんてつ)」は、「初志」と「貫徹」2つの熟語が合わさった四字熟語です。「初志」は、「初めに思い立った希望。もとからの志」、「貫徹」は、「貫きとおすこと」という意味があります。
つまり「初志貫徹」は、「初めからの志を貫きとおすこと」となります。「初心忘れるべからず」と違い、新しい事柄にチャレンジするという意味合いはありませんが、初心を忘れない・貫き通すという点においては類語と言えます。
【例文】
- 食堂についてカレーかラーメンどちらにするか悩んだが、初志貫徹カレーを頼んだ。
- 友達に一緒に遊ぼうよと誘われたが、初志貫徹今日は勉強するため誘いを断った。
「初心忘れるべからず」の英語表現
「初心忘れるべからず」を英語で表記すると以下の文が適していると考えられます。いずれも「最初に決めた決心や立ち位置を忘れないように」といったニュアンスの英語になります。
- Never forget the beginner's humility.(初心者の謙虚さを忘れてはいけない)
- Don't forget your first resolution.(最初に決めたことを忘れない)
- Don't forget what got you there in the first place.(最初にあなたをとらえたものを忘れてはいけない)