「顔色を伺う(うかがう)」とは
「顔色をうかがう」とは、「相手の表情から、相手が考えていることや機嫌を知ろうとすること」を意味する言葉です。
「顔色」には、「(健康状態を表す)顔の色、血色」と「(心の状態を表す)表情、機嫌」などの意味がありますが、ここでは後者の意味で使われています。
この記事のタイトルには、「顔色を伺う」とありますが、一般的には「顔色を窺う」と表記します。その理由は、以下に「伺う」と「窺う」の違いを比べることによって説明します。
「伺う」と「窺う」の違い
「伺う」の意味と使い方
「伺」という漢字には、以下の意味があります。
- うかがい見る。のぞく
- 訪問する。相手の様子や意向をたずねる
- ただす。たずねて問う
次に、動詞としての「伺う」には、以下の意味があります。
- 「聞く、尋ねる、問う」の謙譲語
- 「訪れる」の謙譲語
- (寄席などで「ご機嫌をうかがう」というニュアンスから)大勢の人を相手に話をすること
- 神仏にお告げを願ったり、上司に指示を申し出ること
【上記1~4の例文】
- (聞く)先生の話を伺う。(尋ねる・問う)先生に疑問点を伺う。
- 私がお伺いします。
- (寄席などで)一席伺います。
- 社長のご指示を伺いたいと思います。
「窺う」の意味と使い方
「窺」には、以下の意味があります。
- のぞき見る。こっそり見る
- ねらう。乗ずべき時を待つ(機会を待つ)
次に、動詞としての「窺う」には、以下の意味があります。ただし、4と5の意味は、もっぱら古典で用いられている意味です。
- そっと様子を見る。のぞき見る
- すきを狙う。時期を待つ
- 何かを見て察知する
- 手がかりを調べる
- 心構えをしておく
【上記1~3の例文】
- 塀の陰から向こうの様子を窺っていた。
- 相手チームの攻撃に耐えながら、反撃の機会を窺う。
- 上昇志向の課長は、いつも部長の顔色を窺っている。
「伺う」と「窺う」
「伺」も「窺」も漢字単体には、「見る」という意味がありますが、動詞として使われる時には、上記のような意味の違いがあります。また、常用漢字ではない「窺」は、新聞や雑誌、公文書などに使われることがなく、ひらがなで表記されます。
これらのことを考え合わせると「顔色を伺う」は、「顔色を窺う」と表記することが適切であるようです。
しかし、「伺う」には「ご機嫌をうかがう」というニュアンスもあることから、間違っているとも言い切れません。文章に使うときは、ひらがな表記が妥当ではないでしょうか。
「顔色をうかがう」の使い方
「顔色をうかがう」は、さまざまな場面で使える言葉です。あまり一般的ではありませんが、一番下の例文のようにネガティブな意を帯びて用いられることもあります。
【例文】
- 愛猫のトラさんは、いつ甘えようかと僕の顔色をうかがっている。
- 宿題を忘れたことをひどく叱られたので、私は授業中、先生の顔色をうかがっていた。
- 彼は、クレーマーの顔色をうかがいながら話を進めた。
- 夫婦喧嘩の後、妻の顔色をうかがって仲直りのタイミングを探していた。
- 彼女は、人の顔色をうかがってばかりいるので嫌われている。
「顔色をうかがう」の類語
- 機嫌をうかがう:表情や態度に現れた様子をうかがうこと
- 媚びる(こびる):相手に気に入られるように振る舞うこと
- 八方美人:誰に対しても愛想よく振る舞う人のこと
- 日和見:有利なほうの味方をしようとして、情勢を見ること
「うかがう」の類語
「伺う」の類語
- 尋ねる:一般的にわからないことの答えを求める
- 聞く:「尋ねる」とほぼ同義。「尋ねる」の方がやや改まった言い方
- 問う:聞き出す。追及する
「窺う」の類語
- 一瞥する:ちょっと見ること
- 機会を待つ:チャンスを待つこと。ちょうどよい時期を待つこと
- 様子を見る:外見からわかる人や物事の状態・ありさまの成り行きを見ていること