「訝しむ」とは?
「訝しむ」は、「いぶかしむ」と読みます。マ行五段活用の動詞で、「不審に思う」という意味を持ちます。
あからさまに「怪しい」と指摘できるような部分はないのだが、どうにも原因や意図がわからない、と首をひねるようなニュアンスを持ちます。
「訝しむ」の語源
「訝る(いぶかる)」は、「様子・事情・結果がどうも変だ(が、なぜだろう)と思う。不審がる」という意味で、古語では「いふかる」と表記されていました。「訝しむ」とほぼ同義と言えます。
また、「訝しい」は「訝る」から派生した形容詞で、「不審に思われる」「合点がいかない」という意味を持ちます。この「訝しい(古語では「いふかし」)から派生した言葉が、「訝しむ」です。
「訝る」と「訝しむ」
現在では、「訝る」と「訝しむ」の両方が用いられていますが、「訝る」の方がやや直接的な「不審」の表現です。
【例文】
- 彼は彼女の行動の意図を訝った。
- 彼は彼女の行動の意図を訝しんだ。
上の文は「彼女の行動に隠された意図を怪しんだ」、下の文は「彼女の行動に隠された意図があるのでは、と怪しんだ」程度のニュアンスの違いがありますが、同じ意味にとらえる人も多いかもしれません。
「訝しむ」の使い方
「訝しむ」は、やや固い表現ですから、使用するシーンは限られてくるかもしれません。ここでは、例文を用いて具体的な使い方を紹介します。
【例文①】数年来交流のなかった知人から突然電話がかかってきたので、彼は訝しんだ。
「彼」は没交渉になっていた人からのいきなりの電話に驚いています。疎遠になっているのに、電話をかけてくる意図が分からないからです。選挙の投票依頼か、マルチ商法の説明でもされるのか、と警戒してしまいそうなシチュエーションですね。
【例文②】ずっと成績が低迷していたA君が今回のテストで首席を取ったことを、訝しむ人は多い。
「A君」が不正を行ったという証拠は何もありません。ただ、あまりにも不自然な成績の上昇に、周囲が「彼は何かやったのではないか?」などと疑いを持ってしまっている状態を表します。
「訝しむ」の類語
「怪訝」
「怪訝」は、「けげん」と読みます。「怪しく思い、訝しむ」こと、つまりは「不思議で納得がいかないこと。また、そのさま」を意味する言葉です。
【例文】
- 父は差出人不明の葉書を、怪訝な顔をして眺めている。
- 「いきなりどうしたの?」彼女は怪訝そうに尋ねた。
古い表現で「怪訝」は「かいが」とも読みます。名詞として、「怪訝する」という形で用いられることが多いです。
「怪しむ」
「怪しむ(あやしむ)」には、「疑わしいと思う」という意味があります。「訝しむ」の類語と言えますが、「訝しむ」よりも更に、「信頼できない」というニュアンスが強く出ている表現です。
【例文】
- 笑顔の裏で、何を企んでいるのだろうと怪しむ。
- 彼の証言は本当のことなのか、怪しんでいる。