「置き論破」とは?
「置き論破」(おきろんぱ)とは、ある発言に対する反証をあらかじめ置いておく(設置しておく)ことにより、議論をすることなく相手を論破すること、という意味のスラングです。
通常の議論においては、ある主張が真であるか偽であるかを賛成派と反対派で互いに論じ合い、意見を戦わせることにより何らかの結論を導き出します。この際、最終的に相手(の言説)を言い負かすことを「論破」といいます。
通常の「論破」が何らかの主張に対する事後対応的・反論的な手続きで行われるのに対し、「置き論破」は、「あらかじめ反証が示されている」「既にその主張は否定されている」というニュアンスに特徴があります。
「置き論破」の使い方
「置き論破」というスラングが使用されているのは、基本的にはネット上の掲示板やTwitter上などです。
これらの「文字によってコミュニケーションする場」においては、ほぼリアルタイムで意見の応酬が行われる口頭での議論と異なり、交流のタイムラグが発生しやすく、意図せず「置き論破」が発生しやすいのです。
また、文字によるやりとりは発言内容が常に客観的な形で(発言した日時も含め)残るため、「既に明々白々な事実が挙がっているのに、それと矛盾した発言が行われる」ことへの異様さが素人目にも目立つという側面もあります。
あくまでもスラングである点に注意
「置き論破」はあくまでもスラングであり、論理学用語としてこのような言葉は存在しない点に注意が必要です。
時には、議論をすることが重要であるにも関わらず、前提や条件が明らかに異なる論拠や、理想にすぎない格言や、有名人の抽象的な発言など、証拠として意味を持つかどうか不明確な要素を反証として取り上げて「置き論破」と言われることもあります。
さらにひどい場合には、最初から真偽について議論する意思すらなく、悪意をもってただ相手を攻撃したいがために「(置き)論破」という言葉が使用されることもあるようです。
「置き論破」は、議論のための用語というより、あくまでも特定の場のみで使われる面白おかしい言い回しであると考えるのが妥当でしょう。
例文
- 〇〇市の年間支出について話題になっているのいで、私が出典が明らかなデータを投稿したところ、ほぼ同時にAさんがそのデータとは矛盾する根も葉もない嘘を投稿していた。置き論破とはこのことだ。
- 国民の自由がどうあるべきかについて政府が答弁をする前に、私は憲法〇〇条を明記しておく。置き論破狙いだ。
- 「人間はどう生きるべきか」なんていう問題の是非については、紀元前にソクラテスが置き論破済みだ。
- 勝手に置き論破宣言して立ち去る輩が多いけど、議論はより良い結論を出すためにやるものだってことを忘れないでほしいな。
「置き論破」の元ネタ
「置き論破」という言葉の元ネタは、2016年にネット上の掲示板「なんでも実況ジュピター」(通称:なんJ)に書き込まれた、以下の一連の書き込みです。
それよりブラジルの選手6mとか飛び過ぎやろ
ラビレニ5m98で勝てないとか悲劇すぎる
180 風吹けば名無し 2016/08/16(火) 18:49:17.74 ID:K7hcKmxWd
棒高跳びホンマムズイよな
中学の時にちょろっとやらされたけど
6mくらいしか飛べんかった思い出
解説
上記は、棒高跳びについて話しています。179氏が「(現役選手とはいえ)6mは飛びすぎ」と事実を述べているのに対し、180氏が「自分は中学の頃、6mしか飛べなかった」と経験(記憶)を述べています。
179氏の発言内容は客観的な事実なのであるのに対し、180氏の発言はその事実とは矛盾している大げさな嘘であることがわかります(6mは日本記録を凌ぐ数値であり、中学生には不可能)。
この時、180氏の発言は、179氏の発言によって「置き論破」されていたわけです。よく見ると、両者の書き込み時刻は秒以下のコンマ単位で同一であり、完全に同じタイミングで矛盾する内容を書き込んだという偶然も相まって、大きな話題を呼びました。