「ご愛嬌」とは?
「ご愛嬌」は(ごあいきょう)と読みます。「愛敬」と書く場合もありますが、現代では「愛嬌」という表記が一般的です。
「ご愛嬌」の「ご」は、丁寧表現の接頭語「御」ですが、「ご愛嬌」という言葉には「愛嬌」の丁寧な表現、に留まらない意味の変化があります。この言葉を使うときには正しい理解と注意深さが必要です。
「ご愛嬌」という言葉には、大きくわけて次の二つの意味があります。
- 座に興をそえるもの(座興)、ささやかなサービス。
- 見過ごせるくらいの失敗や、憎めない欠点、ちょっとした難点。
「愛嬌」とは?
「ご愛嬌」とたんなる「愛嬌」との区別をはっきりさせるために、「愛嬌」の意味を把握しておきましょう。「愛嬌」の由来は、仏教における、仏や菩薩の穏やかな温顔を意味する「愛敬相(あいぎょうそう)」という言葉です。
字は「愛敬」で、(あいぎょう)と濁音読みでしたが、室町時代には(あいきょう)という清音読みに変わり、文字もやがて「愛嬌」が用いられるようになりました。
「愛嬌」の意味は、大まかに言えば以下の3つです。
- 愛らしく、可愛らしく、人好きのする表情や動作、性格。
- ひょうきんで、笑を誘うような好ましい表情や動作、性格。愛想。
- 座興、ささやかなサービス、値引きやおまけ。
「ご愛嬌」は、2と3の意味によるものです。商売上では値引きやおまけの「ご愛嬌」が、通常の会話では「笑って許されるレベルのささやかな失敗や難点」という意味の「ご愛嬌」がよく登場します。
「ご愛嬌」という表現を1の意味で用いることはほぼありません。1の意味では「愛嬌」という言葉を使うことが圧倒的に多いです。
「ご愛嬌」の使い方
「ご愛嬌」には、定型的な言い回しがあります。「ご愛嬌ということで」「ご愛嬌で」「ご愛嬌に」などのかたちで使うことがほとんどです。失敗などの場合は、言外に(ちょっとしたことなので、お許しあれ)という思いが含まれます。
使用するときには、細心の注意が必要です。ささやかなレベルであれ、失敗や欠点が背景にある言い回しですから、自分の失敗や目上の人の行動について使うのには適しません。
自分の失敗を「ご愛嬌ということで」などと言うと、「自分で言うな!」と思われますし、目上の行動に「ご愛嬌ですね」と言えば、失敗や短所の指摘ととられ、不快に思われる可能性があります。
「目上の者や第三者が、部下や他の人を軽くかばう」というかたちで用いられる言葉、というのが無難な解釈でしょう。
「ご愛嬌」の文例
(八百屋A)
奥さん、このリンゴひと箱、買っていってよ!みかん一袋をご愛嬌につけるから!
(陶芸教室主催者B)
こちらの列は初心者の習作ですが、ご愛嬌ということでご覧になっていってください。
(上司C男)
君のレポートは誤字脱字が多いぞ。新入社員だし、社内報告書だからご愛嬌ということにしておくが、今後は気をつけろよ。
(会社員D男)
山田課長の歓迎会もたけなわですが、私がご愛嬌に、瞬間芸をやらせていただきます!
(姑E子)
うちの嫁は、そそっかしいのよ。まあ、ご愛嬌ということで、家族の笑いを呼んで明るくなっていいのだけどね。
「ご愛嬌」の類語
「おまけ」
「おまけ」は、下の2つの意味を持つ言葉です。1の意味が、ささやかなサービスという意味での「ご愛嬌」の類語たりえます。
- 主となるものにつけるもの。付録、景品。
- 値引き
「凡ミス」
「凡ミス」は、不注意によるミス、軽率でつまらない失敗、という意味の言葉です。後者が、「笑って許せるほどの失敗」という意味における「ご愛嬌」の類語たりえます。
【文例】新入社員の凡ミスと許してもらえるのも、そろそろ限界だぞ。