「かまける」とは?
「かまける」には、次の二つの意味があります。①ある対象に気持ちが向かって他のことがなおざりになる、あることだけに気を取られて、他を顧みるゆとりがなくなる。②感心する、共感する、心が動く、心惹かれる。
「かまける」は、親や教師など、指導者的な立場の人からかけられた言葉だと記憶している人々が多いのではないでしょうか。あるいは自分が親として、教師として、子どもたちの羽目の外しっぷりに苛立って、口にしているかもしれません。
嘆く、愚痴を言う、という意味もありますが、これは昔の日本語における使用法で、現代日本では使われることがないため、割愛します。現在では、ほとんどの場合で①の意味が用いられます。
「かまける」の使い方
「かまける」は、上述したとおり、現在はほぼ①の意味のみで用いられています。②の「感心する、心惹かれる」などの意味は、奈良時代から用いられていたとのことです。
「心惹かれる」などの意味は、次第に「(心惹かれるがあまりに)他をなおざりにする」という使い方に転じ、現在ではそちらの意味が主流となりました。
「かまける」は、基本的に、「~にかまけて~になった」という使い方をします。「~に気持ちが向かって」などの意味合いで用いますが、実際の使い方では、「~にうつつを抜かして」という感じの、もう少し非難のニュアンスが強い場合もあります。
「~にかまけた」結果は、ネガティブなものとなるのが基本です。なにかに気持ちが集中すれば、成功というイメージが湧きますが、「かまける」は、その影響で他のものがなおざりになるわけですから、ネガティブな意で使うのが適切でしょう。
「かまける」の文例
(A男)
うちの息子は、スマホゲームにかまけて、学校の成績が急降下中だよ。
(B子)
幼い双子の育児の忙しさにかまけて、家の掃除がすっかりおろそかになっているの。
(中学教師C男)
この冬休み、遊びにかまけていると、君たちが志望校に受かることはかなり厳しいぞ。
「かまける」の類語
「うつつを抜かす」の意味と使い方
「うつつを抜かす」は「現を抜かす」とも表記します。意味は、ある対象に過度に熱中すること、我を忘れるほどに没頭すること、ある対象に心を奪われること、など。
「かまける」のように、その結果他のことがなおざりになる、というところまでの意味は含みませんが、ある対象にそこまで没頭すれば、おのずから他はおろそかになりますね。
なにかに没頭すること、熱中することはポジティブな意味を含む場合が多いのですが、「うつつを抜かす」は、夢中になりすぎるというネガティブなニュアンスが多い表現です。
【文例】
- 山本君は、フィギュア集めにうつつを抜かし、貯金がほとんどなくなってしまった。
- ネットサーフィンにうつつを抜かしているうちに、夜が明けてしまった。
「かかりきりになる」の意味と使い方
「かかりきりになる」は、「掛かり切りになる」とも表記します。意味は、ある対象への取り組みに時間や労力をとられ、他のことができなくなる、という状態を指します。
物事に夢中になること、を表す場合もありますが、好んで夢中になるケースだけではなく、義務や状況によってしかたなく「かかりきり」にならざるを得ない場合も含みます。
「かかりきり」になった結果がネガティブなこともポジティブなこともあります。また、手がつけられなかった物事を表記しなくても、文章は成立します。
【文例】
- 中村君は、新人育成の仕事にかかりきりになり、自分の担当業務がおざなりになってしまった。
- 山田さんは家族の看病にかかりきりだったが、そのかいあって早期の回復となった。
- 由美子さんは、三人の子どもたちの子育てにかかりきりだ。