「三文芝居」とは
三文芝居(さんもん-しばい)とは、元々三文ほどの価値しかない下手な芝居や、お金を払う価値がないほど程度の低い芝居を意味する言葉です。
その意味が転じて、底の見える馬鹿げた行為や、何かを隠していることがすぐに分かってしまう言動のことも指すようになりました。
「三文」とは
江戸時代には「寛永通宝(かんえいつうほう)」という通貨が使われていました。社会の教科書に写真が載っていたことを覚えている人もいるのではないでしょうか。円形で、中央に正方形の穴が開いた貨幣です。
その貨幣の最小単位が「一文(いちもん)」で、現在の価値にすると30円前後と言われています。「三文」とはその一文銭が三枚のことで非常に安い値段であることから、価値の低いことや粗末なことの例えとして用いられるようになりました。
「三文芝居」を使った例文
- あの大臣が○○会社からお金を不正に受け取ったことの弁解をしているが、証拠も残っているのに言い訳をする様子は三文芝居を見ているようで滑稽(こっけい)だね。
- 会社の人事で社長派閥の○○さんが驚くほどの昇進をしたね。人事部は純粋に能力を評価したと言っているが、そんな三文芝居を見せられてもしらけるだけだよね。
- 今日の初舞台は緊張して体が思うように動かなかったよ。観客に三文芝居と言われても反論できないなあ。
- あの俳優はなかなか演技が上達しないね。出演ドラマが三文芝居と言われても仕方がないね。
「三文芝居」の類似表現
猿芝居(さるしばい)
「猿芝居」には次のような意味があり、「三文芝居」の類似表現は2番と3番になります。3番は2番から転じてできた意味ですので、その点も「三文芝居」と似通っていますね。
- 猿に芸を仕込み、衣装を着けさせて芝居のまねをさせる見せ物
- 下手な芝居を軽蔑していう言葉
- すぐに見透かされてしまいような、浅はかで愚かな企み
【2.の意味での例文】
昨日、○○劇場でお芝居を観てきたけれど、残念ながら猿芝居としか言えない出来だったよ。
【3.の意味での例文】
違法薬物所持の容疑者が、これは自分のものではない、と下手な言い訳をしているらしいな。そんな猿芝居に付き合っている暇はない。早く自白をとれ!
「茶番(ちゃばん)」
「茶番」は「茶番劇(ちゃばんげき)」とも言い、次のような意味があります。
- 客のために茶の接待をする人
- 滑稽(こっけい)な即興劇
- 底の見え透いた下手な芝居。ばかげた振る舞い
江戸時代、歌舞伎劇場の大部屋楽屋でのお茶くみは、下級役者たちの仕事でした。このお茶くみのことを「茶番」と言い、下級役者たちが余興で演じていた未熟な即興芝居のことも「茶番」と呼ぶようになりました。
下級役者たちの芝居はオチがすぐに分かってしまうような低級なものであったことから、2番の意味が3番に転じ、「三文芝居」と同じような意味を持つようになりました。
【3.の意味での例文】
- ○○氏は、大事な書類をシュレッダーにかけてしまい証拠が残っていないと答弁しているが、傍(はた)から見たらとんだ茶番だよね。
- あの会社の社長はパワハラ疑惑について苦しい説明をしているが、そんな茶番劇で乗り切れるほど世間は甘くないよね。
「三文」を使ったことわざ
「早起きは三文の徳(とく)」
「早起きは三文の徳」ということわざは、朝早く起きると、何かしら良いことがあるという意味です。健康面でも、仕事や学業の効率の面でも、「朝活」は推奨される傾向にあります。
一日早く起きて三文(ほんの少し)ほどの良いことがあるとしたら、早起きを習慣にすれば、良いことがたくさん貯まっていきますね。
【例文】
今年度の僕の目標は、朝のウォーキングを続けることです。「早起きは三文の徳」と言いますから、健康診断では前回よりも良い結果が出るかもしれません。
「三文」を使った表現
「二束三文(にそくさんもん)」
売値が非常に安いこと、また、いくら売っても儲け(もうけ)が出ないほどの投げ売りのことを「二束三文」と言います。
稲藁(わら)を売り歩いても二束(ふたたば)で三文にしかならなかったことや、金剛草履(こんごうぞうり:藁やイグサで作られた大型で丈夫な草履)が二足(にそく)で三文の安い値段で売られていたことに由来する表現です。
【例文】
こんな安物のツボを鑑定してもらっても、どうせ「二束三文」にしかならないよ。
「三文判(さんもんばん)」
「三文」がつく言葉で最もよく耳にするのは「三文判」ではないでしょうか。文房具店や100円ショップ、ホームセンター等で安く購入できる、大量生産されたハンコのことを言います。朱肉不要のシャチハタハンコも「三文判」の一種であると言えます。
【例文】
誰でも買うことのできる三文判を銀行印として登録するのはお勧めできないよ。
「三文○○」
名詞の前に『三文』がつくと、安っぽい、程度の低い、価値のない○○という意味になります。次にいくつか例を挙げます。
- 「三文役者」演技力のない役者
- 「三文小説」下級な小説
- 「三文絵」下手な絵
- 「三文文士」一向に売れない小説を書いている文士
このように、程度が低く下手な物事や人物を表し、また、それらを軽蔑して呼ぶ表現になります。