「ンゴ」とは?
「ンゴ」には、大きく分けて2通りの使い方があります。ひとつめは、なにかをやらかしてしまったり、なにかを失敗してしまったときの語尾として使います。ふたつめは、日常会話の語尾として使います。前者はインターネット上で、後者は若者を中心に使われている傾向があります。もともとは2ちゃんねるで生まれたネットスラングでしたが、語感のよさが若者にウケて、いまでは人気の若者言葉となっています。
「ンゴ」の元ネタ
元ネタは、プロ野球で活躍しているドミンゴ・グスマン投手が、当時所属していた楽天ゴールデンイーグルス対ソフトバンクホークスの開幕戦で「やらかしてしまった」ことにあります。9回裏、楽天が2点をリードしている有利な状況で、ドミンゴ投手が抑えとして登板しました。しかし、1アウトも取ることが出来なかった上、ホークスの柴原選手に逆転サヨナラ3ランホームランを打たれてしまいました。
これを見ていたネットの人々は、「ドミンゴ(笑)」や「ドミンゴ~」「ドミンゴがやらかした」などと2ちゃんねるに書き込み、ドミンゴ投手を馬鹿にしたり面白がったりしました。以来、ドミンゴの「ンゴ」をとり、なにかをやらかしてしまった人を「〇〇ンゴ」と呼ぶようになったのです。
「ンゴ」の使い方
このように、もともとは「やらかしてしまった人につける語尾」でしたが、やがて「やらかしてしまった事柄につける語尾」としても浸透していきました。たとえば、美容室で髪を短く切りすぎたときは「髪切りすぎたンゴ」となり、カビのはえた饅頭を食べてお腹を壊したときは「カビのはえた饅頭食べたらお腹壊したンゴ」となります。
「ンゴ」がさらに浸透してくると、今度はなんでもない事柄にも語尾として使われるようになったり、単体で使われたりすることも増えました。たとえば、「銭湯行ってくるンゴ」や「かわいいンゴ」「食べるンゴ」「ンゴ~」といったように、日常のほぼすべての事柄に使われています。また、「ンゴ」を単体で使うのは語感が可愛らしいからであり、それ自体は意味をなしていません。
「ンゴ」が人気の理由
女子中高生向けのマーケティング支援を手がけるAMFは、「JC・JK流行語大賞」と題して、その年に話題となったものを部門別に発表しています。それによると、「ンゴ」が2017年の言葉部門で第5位にランクインしています。それだけ女子中高生のあいだでは「ンゴ」が使われており、大きな支持を得ている証拠だといえるでしょう。
人気の理由として、語感のよさが挙げられます。ちょっとした日常会話の語尾に「ンゴ」をつけることで、柔らかさや可愛らしさを演出でき、言葉全体が丸みを帯びたようなニュアンスになります。女子中高生たちのあいだでは、言葉遊びの一種として親しまれているのでしょう。
「ンゴ」をめぐって
2ちゃんねるの一部の住民は、なんにでも「ンゴ」をつける若者たちを快く思っていないようです。2ちゃんねるは「ンゴ」の生誕の地であり、特に古くから利用している住民は、「本来はやらかしたことに使うべき言葉なんだ」との考えを持っていることが多いため、いろいろな言葉の語尾につける若者たちに対して、「その使い方は違う」と注意することもあります。
しかし、若者たちはそんな注意に耳を傾ける様子はなく、SNSなどでも自由に使っています。しだいに2ちゃんねるでも「ンゴ」の乱用がみられるようになり、反比例するように本来の意味で使用している人は少なくなっている印象です。
2ちゃんねるでは、しばしば「老害(おおむね中年以上)」だの「ゆとり(おおむね若者)」だのと対立が煽られていますが、「ンゴ」をめぐっても古株と新参者の争いが静かに繰り広げられているのです。もとがネットスラングであるかぎりこうした争いは起きるもので、もはや2ちゃんねるの風物詩といえるでしょう。