「偶々」の意味
「偶々」(たまたま)には、次の二つの意味があります。
- 偶然。ちょうどその折。
- まれではあるが、時折り。
1の意味は何事かが意図しないタイミングで起こるさまを、2の意味は何らかの頻度を表しています。
2の意味は今日ではあまり用いられていませんが、両方とも副詞として何らかの動作・行為・現象を修飾する点は共通ですので、覚えておきましょう。
「偶」の字義解説
「偶」(グウ)の字は、「人」と「禺=つくりもの」から成り、もとは「ひとがた(例:偶像)」の意でした。
これが「俱(=そなえる、ともに)」や「耦(=ふたり並んでたがやす)」の字にも通じるようになり、「つれあい(配偶者)」「ならぶ、そろう、組み(偶数)」「ちょうど(偶然)」などの意味も表すようになりました。
「偶々」の「偶」は、タイミングとしての「ちょうど」が二度繰り返されて、「偶然」「時折り」という意味になったと考えることができますね。
「偶々」の使い方
「偶然、ちょうどその折」
「偶々」の使い方のひとつは、タイミングとして「偶然」「ちょうど」を表したい場合です。「偶然」には良いものと悪いものがありますが、「偶々」と言う場合には、中立的、もしくは良い価値観で使います。
例えば「偶々、悪い出来事が重なった」と言う場合でも、「偶々」は「(悪い)出来事」ではなく「重なった」にかかっています。
期待はしていなかったし、計画も予想もしていなかったが、結果として何かが「ちょうど」成立した、と考えて使うと良いでしょう。
【例文】
- この前、散歩のつもりで街をぶらついていたら、偶々、小学校時代の同級生に会ったんだ。
- 期末テストの成績が学年一位になったA君は、皆からの称賛に対し、「偶々ヤマが当たっただけだよ」と照れ臭そうに答えた。
「まれではあるが、時折り」
「偶々」のもう一つの使い方は、頻度として「まれではあるが、時折り(ある)」と言いたい場合です。「偶(たま)に」や「稀(まれ)に」の同義語であり、今日ではこの意味で「偶々」と使われることは多くありません。
「頻度」を表す言葉の中では、「ほとんどない」「めったにない」「めずらしい」といったニュアンスですが、裏を返せば「時々はある」と言えるものについても「偶々」と使うことができます。
【例文】
- 性格上、彼とは対立することが多いが、偶々意見が一致することもある。
- 機械のエラーが偶々出てしまった時には、手作業で対応するマニュアルとなっている。
通常はかな表記する
「偶々」を使う際の注意点として、通常は「たまたま」とかな表記されることが多いことを覚えておきましょう。
「偶」は常用漢字ですが、「偶々」という表記はあまり一般的ではありません。小説など、わざと堅い調子で表現したいという特別な意図がある場合を除いては、ひらがな表記したほうが無難です。
「偶々」の英語表現
「偶然、ちょうどその折」
「偶々」=「偶然、ちょうどその折」という意味での英語表現は以下の通りです。
- unexpectedly(思いがけなく、意外にも)
- accidentally(偶然に、自己的な)
- by chance(偶然)
なお、「chance」は日本語では「チャンス」として良い機会というニュアンスが強めですが、英語では中立的に「偶然」という意味で使われます。
【例文】
- He showed up unexpectedly last night.(彼はゆうべ偶々[ちょうどよく]現れた)
- I found out about his prot by chance.(私が彼のたくらみを知ったのは偶々です)
「まれではあるが、時折り」
「偶々」=「まれではあるが、時折り」という意味での英語表現は以下の通りです。
- rarely(まれに)
- occasionally(たまに、時々)
【例文】
- This sort of thing will occur very rarely.(こういうことは偶々起こることがある)
- I only use the car occasionally.(私が車を使うのは、本当に偶々だ)