「拙作」とは?
「拙作」とは、自分の作品のことをへりくだって言う言葉(謙譲語)です。
「拙(つたな)い作品」と書く通りに、「つまらない作品、出来が悪い作品」という意味もあるのですが、今日ではこの意味での使用例は少なく、自己の創作物を指す謙遜表現としての使用が一般的です。
「拙い」とは
「拙い」(つたな-い)とは、動作などが巧みでないこと、能力や品格が他より劣っていること、つまらないこと、などの意味です。
「拙」(セツ)という字は、「手」と、へこむさまを表す「屈」から成り、手わざなどが他より劣るという意です。「拙者」(せっしゃ:近世において、武士が自分のことをへりくだっていう語)などの言葉が代表例ですね。
他より劣るという意から、「拙宅」(せったく:自宅の謙譲語)、「拙文」(せつぶん:自分の文章の謙譲語)など、「拙作」と似た謙遜表現も多く存在します。
「拙作」の使い方
「拙作」という言葉は、主に文筆家などのクリエイターが、自分が作った作品や創作物をへりくだって言う場合に使います。
一口に「作品」と言ってもさまざまなジャンルのものがありますが、「自分で作った」といえるものであれば、小説、絵画、陶芸など、さまざまなものに使うことができます。
ただ、例えば映画などの、製作について大人数が関与している形態の作品については、「拙作」が用いられる機会はあまり多くないようです。これは、へりくだる主体が大きすぎ、謙遜よりも関係者への礼を失する側面が大きくなってしまうためと考えられます。
本当に「つまらない作品」というわけではない
「拙作」は、既に述べたとおり謙遜表現としての使用が一般的であり、例え自分の作品に対してであっても、文字通りに「つたない作品、つまらない作品」という意味で使わないようにご注意ください。相手に通じない可能性が高いでしょう。
ある作品・創作物について本当の意味で「つまらない、出来がつたない」と言いたい場合には、「駄作」(ださく)などの表現を用いてください。(※詳しくは後ほどご紹介します)
例文
- 苦しみぬいて書き上げた拙作が、この度、〇〇賞を受賞することになり、誠にうれしい気持ちです。
- これほど詳しい感想をくれるなんて、ありがたい。君は拙作をよほど読みこんでくれているんだね。
- 雑誌△△の今月号の読み切りに、拙作が掲載されております。
- この度のお祝いに、拙作の茶碗を一筆添えて贈ります。
「拙作」の関連表現
「拙作」のように、作品の出来・不出来を言い表す言葉は他にもいくつかあります。「拙作」の類義語的な表現、「拙作」の反対語としての表現、それぞれに分けてご紹介します。
「拙作」の類義語
「拙作」のように「自分の作品の謙遜表現」や「つまらない作品」を指す言葉としては、以下のようなものが挙げられます。(正確には、中立的なニュアンスの言葉も含まれます)
- 駄作…出来の悪い作品、くだらない作品。
- 愚作(ぐさく)…つまらない作品。(謙遜表現として使用可)
- 凡作(ぼんさく)…平凡でつまらない作品。
- 拙著(せっちょ)…自分の著作を謙遜していう語。作品以外にも著作物全般に使える。
- 拙稿(せっこう)…自分の原稿の謙譲語。
- 下作(げさく)…不出来なもの、下等な作品。⇔上作
- 自作…自分の作品。
「拙作」の反対語
「拙作」の反対語として、「良い作品」「すばらしい作品」を意味する言葉としては、以下のような言葉があります。
- 大作…規模の大きな作品。または、すぐれて立派な製作。傑作。
- 名作…すぐれた作品。
- 佳作(かさく)…比較的出来のよい作品。
- 秀作…すぐれた作品。
- 力作(りきさく)…力をこめて作った作品。労作。
- 上作(じょうさく)…上出来の作品。⇔下作
また、ネットスラングなどでは「(作品名)は神」「神作品」などの表現が用いられることもあります。