「嫌儲」の読み方
インターネット上で発生した語である「嫌儲」には、読み方が定義されていません。「嫌」と「儲」のそれぞれの音読み、訓読みを基に、以下の3つの読み方が存在しています。
- 嫌儲:けんもう、けんちょ、いやもう
- 嫌:【訓読み】いや、きら(う)、【音読み】けん、げん
- 儲:【訓読み】たくわ(える)、もう(け)、【音読み】ちょ、じょ
単語が作られた当初は「けんちょ」が優勢でしたが、最近では「けんもう」の方が優勢と言われています。
「嫌儲」の意味
「嫌儲」の意味は、広義では人が金儲けをすることを嫌うことです。狭義では、無料で得られる2ちゃんねるの書き込みを転用して金儲けをすることを嫌うこと、または嫌う人を指します。
2ちゃんねるやその後継の5ちゃんねるには「嫌儲板」(嫌儲を話題とする掲示板)が立っており、「嫌儲」はその利用者を指すこともあります。
なお、「嫌儲」の語は『現代用語の基礎知識2008』(自由国民社)に「ウェブの言葉」の一つとして収録されています。ネットスラングの中では相当に一般的になった用語と言えます。
使い方
- 嫌儲って感情は、自然に理解できるな。
- 被災地に牛丼屋がトラックで牛丼を運んだけど有料だってニュース、嫌儲的にはどう思う?
- 嫌儲主義と商業主義の対立。
「嫌儲」から派生した語
「嫌儲」する人を表す語がいくつか派生しています。
ケンモメン
「ケンモメン」は、「嫌儲」+「メン(男性)」から成立した語です。ケンモメンの女性形は見当たらず、「ケンモメン」一語に両性が含まれるようです。
嫌儲厨
「嫌儲」の中でも、転用で儲けることを嫌うというより、単純に他人が儲けていることが面白くないという感情的な人々を指す時には「嫌儲厨」(けんもうちゅう)という言葉が使われます。
「嫌儲」+「厨」から来た言葉であり、この「厨」とは、中坊を厨房と書き換え、中学生のように未熟で人に迷惑をかける人を揶揄する接尾辞です。
「嫌儲」の成立過程
『現代用語の基礎知識』に掲載されるほどの単語となった「嫌儲」が、どのように生まれ、広がっていったのか、その過程を順を追ってご紹介します。
VIP系ブログの炎上
2006年にVIP系ブログと呼ばれるブログが相次いで炎上し、閉鎖に追い込まれました。VIP系ブログとは2ちゃんねるのニュース速報(VIP)板の内容からの転載を記事にしているブログです。
VIP系ブログは広告を載せているため、自由な意見交換の場である掲示板のやり取りが勝手にブログに転載され、それが金儲けに使われている構図となっていました。それに対する掲示板ユーザーの反発(の理由)を一言で表現したのが、「嫌儲」です。
その後は金儲け全般に対する反感を表す使い方にも発展していますが、インターネット社会の動きと並行して現れた語と言えます。
嫌儲板の登場
「嫌儲」の騒動は一度では止まず、何度か繰り返しました。そして2007年、2ちゃんねるに営利目的の転載禁止を謳(うた)うニュース速報(嫌儲)板が新設されるに至りました。
その後も嫌儲板の人々は、ブログを閉鎖に追い込んだり、他の掲示板に荒らし行為を行ったりするなど、積極的な行動をとり続けました。そのため、「嫌儲」や「嫌儲民」は否定的なニュアンスを帯びて使われるケースも多くなりました。
そのため、当時は「某アフィリエイトサイトが嫌儲で話題になっている」「嫌儲民(嫌儲版の住民)はそっちに帰ってくれ」などの書き込みも多くみられました。
「嫌儲」の現在
「嫌儲」論者の活動はじきに下火になっていきました。インターネットの普及につれ、インターネット上のものは無料であるという考えが支配的ではなくなってきたからです。
各サイトが引用についての考えを明示する、作品の著作権の存在が知れ渡り規制も強化されるなど、ルールが周知されるようになり、引用可能な範囲が明示されるようになったことも大きな理由でしょう。
現在の「嫌儲」のありかた
新しい用例を見る限りでは「嫌儲」は商用での無断転用に対する怒りではなく、人がお金を稼いでいたり、金銭的恩恵を受けているのが許せない(人)という意味で使われています。
- 節税法を話したら、嫌儲に絡まれた
さらに、営利行為を不必要に忌み嫌うのは自分の経済的、社会的な立場からの僻みであるとして、「嫌儲」を「下層階級」と断定し、軽蔑的に使われることもあるようです。