「手慰み」の意味と使い方
暇つぶし
「手慰み」とは単なる暇つぶしを意味します。特にすることもなく、ただ時間を持て余しているから、とりあえずやってみる。時間さえつぶれればなんでもいい。そんな余暇活動です。兼好法師が「つれづれ」と呼んだ時間にするような作業ですね。
そこには、本気も熱意もありません。なので、片手間にやっているような、遊び半分の作業という意味もあります。ほんの戯れ、素人仕事です。
【例文】
- 土曜日の午前中は、仕事もなくてちょっと退屈。手慰みに編み物でもしてみる。
- 「ずっと楽器やってたんでしょ?ちょっと弾いてみてよ。」「いえいえそんな、ほんの手慰みですから。」
指でもてあそぶ
「手慰み」には指先でものをもてあそぶことという意味もあります。あれこれといじってみたり、感触やかたちを味わうことです。
退屈な授業中に、先生の話を聞き流しながらペン回しをする学生が良い例ですね。ロングヘアの女性が髪をくるくる回すしぐさもそう。煙草を吸う人の中には、ライターのふたを開け閉めする人もいますね。
【例文】
- 手慰みにハンカチを折りたたむ。
- 輪ゴムをこねくり回して手慰みにしていたら、先生に見つかった。
ギャンブル
ばくちや賭け事のことを「手慰み」と呼ぶこともあります。今の言葉でいうとギャンブルですね。時代小説やノワール小説に「手慰み」が登場しているならこの意味でしょう。
【例文】
- 中学生にもなると悪い手慰みを覚えるものもいて、中にはおまわりさんの厄介になるものもいる。
- 見た目に反して悪人だそうだ。手慰みもするし、ゆすりやたかりもするという噂だ。
「手慰み」の「慰み」とは?
「手慰み」はどうして「手慰み」というのでしょう?「手」を使っているから「手」は良いとして、「慰み」はいったい何でしょう?
「慰み」とは、心を静めて落ち着かせる、あるいは、楽しい気分にさせるものです。悲しみや寂しさを静めて、心を上向きにしてくれるものです。やることがなくて退屈な「手」を落ち着かせてくれるような仕事といえますね。
「音楽を慰めにする」「哲学に慰めを求める」の「慰め」と考えるとご理解いただけるのではないかと。また、「慰め」は心をいやすことが大事ですが、「慰み」は何をしていやすのかという点が重視されます。
よくある誤解
誤解している人もいるようですが、「慰み」はいわゆる「慰みもの」のことではありません。たしかに「手慰み」にはギャンブルという薄暗い意味もありますが、それだけです。それ以上に退廃的な意味はありません。
「手慰み」の類語
手すさび
「手慰み」は「手すさび」ともいいます。漢字で書くと「手遊び」です。「手荒び」とも書きます。
「すさび」は勢いが自然と変化していくという意味の古文単語です。良い方向なら心の赴くままにすること、悪い方向なら惰性に任せて衰えていくことと言えます。気の向くままにすることといえば、お遊びですね。現代では「心がすさむ」と悪い意味で使われます。
虫熟し
「虫熟し」と書いて「むしこなし」と読みます。気分転換やストレス発散、いわゆる憂さ晴らしや暇つぶしのことです。「熟し」は上手に扱ったり、うまく処理することです。「仕事をこなす」「一輪車を乗りこなす」の「こなす」の名詞バージョンといえます。
ここでいう「虫」とは体に住んでいたと考えられていた架空の虫です。昔の日本では、体の不調は虫が暴れているせいだと考えられていました。「虫の居所が悪い」というやつです。この虫を上手に操るためにする気分転換が「虫熟し」です。