「身もふたもない」とは?
「身もふたもない(みもふたもない)」とは、表現があからさま・ストレート過ぎて、含みや、やんわりと遠回しにぼかした表現がなく露骨であり、情緒や風情のない様子を表します。「実もふたもない」と表記されることもありますが、同じ意味です。
「身もふたもない」の「身」は入れ物・容器のことで、「ふた(蓋)」はその入れ物のふたのことです。「身もふたもない」は、入れ物もそのふたもない、つまり、何もない、入れ物として成り立たないということを表しています。
入れ物がないため隠してくれるものがなく、露骨に中身が出てしまっているというさまから、この表現が生まれたようです。言い方が直接的過ぎて配慮が足りないことを指摘するときなど、基本的にはネガティブな意味で使われる言葉です。
「元も子もない」との違い
「身もふたもない」と混同されやすい言葉に、「元も子もない(もともこもない)」ということわざがあります。
「元も子もない」の「元」は元金のことで、「子」は利子のことです。利子を得るどころではなく、元金まですべてなくしてしまう様子から、「欲張った結果、金銭的な問題に限らず、何もかもをなくしてしまうこと」を表しています。
したがって、表現が露骨であることを表す「身もふたもない」とは意味が異なります。
「身もふたもない」例文
- この日程ではこのプロジェクトを完成させることができない、というあなたの意見は確かに正論だが、それを言ってしまっては身もふたもないだろう。
- みんなで映画を見に行くためにせっかくおしゃれしてきた彼女に対して、「そのメイクは似合ってない」なんて身もふたもないことを言うから、あなたはいつまでたっても彼女ができないんだよ。
- 彼だって、体力がないなりに、サッカー部のレギュラーを目指して頑張っているんだ。友達なら、レギュラーは無理だ、なんて身もふたもない言い方をしないで、建設的な意見を言ってあげたらどうなんだ。
「身もふたもない」類語
にべもない
「にべもない」という言葉は、無愛想で素っ気ないこと、他人に対して冷たいことを指しています。「にべない」と使われることもあります。
「にべもない」は、漢字で書くと「鮸もない」です。「鮸(にべ)」は、スズキ目ニベ科の海水魚で、粘り気の強い浮き袋を持っています。この浮き袋は、接着剤の原料として使われていました。
「にかわ」「にべにかわ」と呼ばれたこの接着剤の粘着力が他人との密接な人間関係に例えられ、「にべもない」という慣用句が生まれたのです。
歯に衣着せぬ
「歯に衣着せぬ(はにきぬきせぬ)」は、相手に遠慮することなく、思ったことをずけずけと、率直に言うことを言います。
「衣」は衣服のことですので、「歯に絹着せぬ」と表記するのは誤りです。また、「はにころもきせぬ」と読むのも誤りです。
「身もふたもない」や「にべもない」が、基本的に否定的な印象で使われるのに対して、「歯に衣着せぬ」は、「思い切って正直に言う」場合など、肯定的な言葉として使われることも多いようです。
忌憚のない
「忌憚のない(きたんのない)」は、余計な気遣いや遠慮がない様子を表します。「忌憚」とは、遠慮することです。
主に公的な場などで広く意見を募りたいときに、「忌憚のない意見をお聞かせください」といった形で使われます。この言葉も、どちらかといえば肯定的なイメージで使われることが多いようです。
「身もふたもない」英語表現
「身もふたもない」の英語表現としては、次のようなものがあります。
- He is altogether too outspoken.(彼はものをずけずけ言う人だ)
- That is too direct a way of putting it.(ずいぶんハッキリ言うね)
- We won’t get anywhere if you talk like that.(それを言ったらおしまいでしょ)
「身もふたもない」と「正直」
「身もふたもない」と「正直」とあいだには、はっきりとした線引きはありません。ただ、世の中は常に正しいこと、真っすぐなことだけで成り立っているわけではないのです。
時には、紛れもない真実であっても、頑丈な入れ物に入れ、しっかりふたをして、表に出さない配慮が必要となることもあるでしょう。正直さが常に世のため、人のためになるとは限りません。
どうしても正直な物言いが必要となった時には、「身もふたもない言い方になってしまうけど…」と、自分からこのことわざを使えば、スマートかもしれませんね。