「すべからく」とは?意味や使い方をご紹介

「学生はすべからく勉強すべきだ」などの表現に使われる「すべからく」。「そうあるべきこととして~」という意味なのですが、「すべて~」の意味であるとする誤りが大変多い言葉でもあります。今回は、「すべからく」の正しい意味や使い方についてまとめます。

目次

  1. 「すべからく」とは?
  2. 「すべからく」の使い方
  3. 「すべからく」=「すべて」は誤り

「すべからく」とは?

「すべからく」とは、「(当然、ぜひ)そうあるべきこととして~、なすべきこととして~」という意味を持つ言い回しです。

漢字表記は「須く」(または「須らく」)。漢文を訓読する場合における再読文字「須」(すべからく~べし)に由来する言葉です。

詳しくは後述しますが、「すべからく」は、「すべて」という意味であるという誤解が大変多くあります。使用にあたっては十分にご注意ください。

語の成り立ち

「すべからく」の成り立ちは、まず、何らかの動作を表す「す」と、推量を表す「べし(べき)」の活用形「べかり」が組み合わされた「すべかり」という語が最初にありました。

これに、「~すること」「~であること」を表す接尾辞「~(あ)く」がつき、「すべからく」と語が変化したと考えられています。

このような語の変化を「ク語法」と言い、「曰(いわ)く」「思はく(=思惑)」などの語もク語法の例です。

「すべからく」の使い方

「すべからく」は、基本的には「すべからく~べき(べし)」という形で、何らかの事実や主張を補強・強調するための言い回しとして用いられます。

「すべからく」自体が「す・べき」という語から成り立っているため、「すべからく~べき」は、「べき」が重ねられるぶん、強めの意思・決意、確実な推量などを表し、時には命令のニュアンスを含むこともあります。

主な使用場面としては、「すべき理由」について「(当然、ぜひ)すべきであることだから」と言えるような自明的な事柄の強調や、何らかの物事にまつわる説明の結論部などが挙げられます。

用例

  • 学生はすべからく勉強すべきだ。
  • 理不尽な暴力は、この世からすべからく排除されるべきだ。
  • 男に生まれたならば、すべからく人生を楽しむべし。

「すべからく」=「すべて」は誤り

「すべからく」という言い回しは、「すべて」の意味であるとする誤解が非常に多くあります。

平成22年に行われた「国語に関する世論調査」(文化庁)では、「すべからく」が「すべて、みな」という意味であるとする誤答が38.5%(世代によっては45%)にのぼりました。

しかし、どれほど多くの人が「すべからく」を「すべて、みな」という意で使っていても、誤りは誤り。ビジネスシーンなどでは、正しい言葉を知らない人だという評価を受ける可能性がありますので、くれぐれも誤用にはご注意ください。

誤りが多い理由

用法の誤りが多い理由としては、以下の3点が考えられています。

  1. 「すべからく」の「すべ」が、「すべて(全て)」と結びつく
  2. 口語では「すべからく~べし」から「べし」が省かれることがあり、本来の用法が意識されない
  3. 「すべからく」の「そうあるべきこととして」という意味が、「すべて」の意味に近い

「すべからく」は「すべて」の意に近い

上に挙げた中でとりわけ重要なのが、3番目の理由です。「すべからく~」という言い回しは、確実な推量の意を含むため、主語を一般化・抽象化する傾向があり、必然的に「すべて」という意味とつながりやすいのです。

先に挙げた用例を今一度ご覧ください。「すべからく」を「すべて」に置き替えても、文の意味がほとんど変わらないことがおわかりになるのではないでしょうか。

とはいえ、最初から「すべて」の意を念頭に「すべからく」を用いると、明らかな誤用となってしまう場合があります。本来の意味を忘れないようご留意ください。

誤用の例

  • 校舎に残っていた子供たちは、午後六時までにすべからく下校した。
  • 彼が蹴ったボールは、すべからくゴールに吸い込まれた。

これらの用例はいずれも誤りです。「すべて、みな」という意を表したい場合は、「すべからく」ではなく「ことごとく」などの言い回しを用いましょう。

このような誤りを避けるためには、本来の用法である「すべからく~べし(べき)」という形を覚えておく方法が挙げられます。「~べき」という言葉を語尾につけることを意識すれば、間違いの機会も減ることでしょう。


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