「少し」とは
副詞の「少し」(すこし)とは、数量・時間・程度が小さいことを表しており、小さな単位を表す際の「ちょっと」「いくらか」に相当する語です。
「少し」の類義語には、「わずか」「些細(ささい)」「若干(じゃっかん)」などがあり、いずれも「少しある」「小さな」状態を表す語です。
「少し」の使い方
「少し」「ちょっと」の使い方
「少し」と「ちょっと」は、TPOで言い換えの可能な語です。また、共に肯定と否定とを微妙なニュアンスで伝えることができます。
【肯定を伴う「少し」と「ちょっと」】
- 景気づけに、これから少し(ちょっと)ビールでも飲んでいかないか?
- 父が進路相談に乗ってくれた。少し(ちょっと)父を見直した。
【否定を伴う「少し」と「ちょっと」】
- この金額で、ヨーロッパにひと月滞在するのは、少し(ちょっと)無理かもしれないよ。
- もう少し(ちょっと)ちがう襟元のブラウスはないかしら?
「少し」の名詞的な使い方
「少し」には、「少しの時間」「少しは勉強もする」など、「少し」を主格に据えて名詞として用いる表現があります。
【使い方】
- 少しは遊ぶゆとりもないと、いつかストレスでパンクするよ。
- 少しの心がけで、人生は「ハッピー」になるそうですよ。
「少し」の類語
「幾らか(いくらか)」
名詞「幾らか」は、「少し」や「ちょっと」よりも、畏(かしこ)まった様子で訊ねたり、話す際に使われる「少し」の改まった表現です。その様子から、小説などでは口語に対する文語の記述によく現れてきます。
【使い方】
- 恩師の言っていたことが幾らかは理解できる年齢になった。
- (副詞的に)毎日いくらかでも人の役に立てれば、それに越したことはない。
「僅か(わずか)」
名詞・形容動詞の「僅か」は、数や度合い、価値や程度が小さく少ないこと、ごく小さな様子を表します。「少し」を副詞的に表す「少しの」に対して、ここでは「わずかな」と表します。
【使い方】
- お待たせして申し分けありません。社長はあとわずかで到着します。
- (副詞的に)今年のベースアップは、わずかな「希望」を持てる上げ幅になった。
「少々(しょうしょう)」
名詞「少々」は、わずかな量を表す語として、また、程度の小さな様子を表して使われる語です。
副詞的には、数の少なさを丁重に伝える際に活用されており、特にサービス業の店頭や電話口などで、待たせる客を相手に、不快にさせないよう配慮して使われる「少々お待ちください」は効果ある言葉づかいです。
【使い方】
- じつは人事のことで、少々、部長にお願いがあります。
- (副詞的に)ここまで来たんだから、少々のことではへこたれない。
「些細(ささい)」
形容動詞「些細」は、とり上げる価値のない小さなもの、ごくわずかなことやちょっとした様子を表した語です。
この語の持つニュアンスには、「とるに足らない」といった意味の自嘲や侮蔑の思いも含まれます。その効力を心得て、使い分けには注意を要する語です。
【使い方】
- 些細な過ちだと思い直して、これからは前向きに生きていこう。
- 彼は、私のどんな些細な忠告も気持ちよく聞いてくれる人でした。
「若干(じゃっかん)」
名詞「若干」は、さして多くない数を「ざっくり」と表す際に用いられます。「少し」と同じように、副詞的に使われる場合の「若干」は、「ちょっと」や「いくらか」を表す語です。
【使い方】
- 応募の結果、多くの募集の中から若干名の採用を決めたらしい。
- (副詞的に)いまのあなたの説明には、若干気になる点がありました。
「若干」には「若」という字が含まれているために、年齢が若いことを指す「弱冠」と意味を混同されることがよくありますが、あらかじめ区別して使い方を心得ておくことが大切です。
「少し」まとめ
「大量生産大量消費」の昭和の社会から平成を経て、いま日本は「断捨離」を提唱する人が現れる社会になっています。
多くを所有して誇る社会から「少しでも構わないけれど充実した質」を求める社会へと、令和は今後スローガンを掲げるかもしれません。
最後に「少し」を大切にしようと古人が説いたことわざがありますので、それをここに紹介して『少し』の〈まとめ〉とします。
【角を矯(た)めて牛を殺す】
(牛の曲がった角をまっすぐにしようと、無理に手を加えることは、牛を殺すことになることから)少しの欠点を直すために手を入れたりすると、却って全体が駄目になってしまうことのたとえ。
【塵も積もれば山となる】
(塵のような小さな物でも、少しずつ積もり重なれば、やがては山になることから)些細な事柄、どんなに僅かな出来事も、けっして疎かにしてはならないことのたとえ。