「隠す」とは?
「隠す」には、大きく分けて三つの意味があります。
- 物を何かで覆ったり、しまったりして、人に見られないようにする行為。
- 物事を他者に知られないようにすること。秘密にすること。
- 死者を葬ること。
一番目の意味は、物理的に他者の目から見えなくする行為を指しています。誰しもが、子供の時に楽しんだ「かくれんぼ」は、まさに「鬼」から見つからないように身体を隠す遊びです。
二番目の意味は、実際的な見える、見えないではなく、「知られないように」何かを秘することです。端的に言えば、「伝えない」ということであり、時には知られることを防ぐために、何らかの隠蔽工作にまで及ぶこともあります。
三番目の意味は、現代ではほぼ使われることがありませんが、身分の高い人の逝去に関しては、いまなお敬いの用法として「お隠れになる」として使われています。
「隠す」の使い方
「隠す」の三つの意味ごとに、その使い方を紹介いたします。
- 家族にも秘密の機密書類を持ち帰った宏は、家でその書類を隠す場所を探し回った。
- 田中刑事は、担当事件解決の大きな手掛かりを得たが、まだ同僚にも隠す時期だと自らに言い聞かせた。
- 皇室にゆかりの深いとある気高いご神職の方が、昨日お隠れになりました。
「隠す」に関連した言い回し
「隠す」は、諺などにも様々なかたちで用いられています。その代表的なものとその使い方をご紹介します。
色の白いは七難隠す
「色の白いは七難隠す」の七難とは、多くの難点のことを表します。色の白い女性は、さまざまな難点をもっていたとしても、それを隠してあまりあるほどに美しく見える、という例えです。
【例】
- 由美子は色白な美肌の持ち主だ。なかなかワイルドな外見ではあるが、「色の白いは七難隠す」との格言どおり、男性からの人気は高い。
能ある鷹は爪を隠す
狩りのうまい鷹は獲物を油断させるために爪を隠し、一気につかまえる、という例えから転じ、「能ある鷹は爪を隠す」は「人は自分の才能を軽々しく吹聴せず、ここぞという時に発揮するべきだ」という意味で用いられています。
【例】
- 普段おとなしい斎藤さんが、企画会議で突然課長から意見を求められ、誰もが感嘆するような見事な企画案を述べた。まさに、能ある鷹は爪を隠すだ、と社内では賞賛しきりだった。
頭隠して尻隠さず
「頭隠して尻隠さず」は、雉が敵から隠れるために草むらに頭をつっこむが、尾が丸見えで実は隠れたことになっていない、ということに由来することわざです。
悪事や隠したいことを隠蔽するつもりで行動しても、隠せているのは一部だけという失態を揶揄して使います。
【例】
- 子供たちは、禁じたお菓子をこっそり食べた時、包み紙は見えないところに捨てたが、食べかすを大量にこぼしていた。頭隠して尻隠さずとは、このことだ。
「隠す」の類語と使い方
覆う(被う、蔽う、蓋う):あるものを広げて、その下にあるものを隠し、外からは見えない状態にすること。(文例:来客を迎えるために、床に積み重なった雑物類をカバー布で覆った)
忍ばせる:そっと隠すこと。(文例:入院中、甘いものを厳禁されている良子は、売店で買ったドーナツをポケットに忍ばせて病室に戻った)
隠匿する:隠してはならないものを、人目にふれないようにすること。人をかくまうこと。(文例:上司からの圧力に負けて、宏は不正経理の書類を隠匿した)
秘密にする:物事を隠し、他者に教えないこと。他人に知られないよう伏せること。(文例:元カレと再び交際することになったが、親には当面秘密にすることにした)
非公表にする:公に明らかにしないこと。(文例:芸能事務所のAでは、所属タレントのプライベートな交際など、私生活はいっさい非公表をルールとしている)