「にて」とは
「にて」は、日本語文法の〈格助詞〉のひとつである「に」に接続助詞「て」をつなげて表します。日頃、使われている「…で」に相当する語で、文章の中の語や句、文節間の関係を示す働きをします。
「にて」の意味と使い方
「にて」は以下のように使い分けされます。
- 場所を表す
- 時間や年齢を表す
- 手段・方法・材料を表す
- 理由・原因を表す
場所を表す「にて」の使い方
「にて」は、場所を示す時に用いられます。伝達や報告文の基本構成要素とされる「5W1H」のうち、「Where」(どこで)の部分を表すのがここでの「にて」です。
【例文】
- 本日の会議は、本社の「第3会議室」にて行います。
- 結婚式は「明治記念館」にて、滞りなくとり行われました。
- 台風が接近している今朝は、子供たちを自宅にて待機させています。
時間と年齢を表す「にて」の使い方
「にて」は、時間や年齢を表す際にも使われます。「5H1W」では、「When」(いつ)の部分を示すのがここでの「にて」になります。
【例文】
- (時間)列車は、さきほど14時にて運転を再開しました。
- (時間)本日は土曜日なので午後5時にて閉館いたしました。
- (年齢)津田梅子は、満6歳にて岩倉使節団の一員として渡米しました。
- (年齢)15歳にて学業を終えたあと、生涯を芸の道に捧げた人だった。
手段・方法・材料を表す「にて」の使い方
「にて」は、求められるそのやり方や扱い方、その道具を説明するのに適した言葉です。ここでの「にて」は、「5W1H」の「How」(どのように)と「What」(なにを)を指す語になります。
【例文】
- (手段)紅葉を散策しながら徒歩にて下山してください。
- (方法)2階の「総合受付」へはエスカレーターにてご案内しております。
- (材料)明日は当社専用車にて貴社エントランスへお迎えに伺います。
理由・原因を表す「にて」の使い方
「にて」は、理由や原因を「改まった口調」で説明する際に用いられます。ここでは「5H1W」の「Why」(なぜ)を表す「にて」になります。
【例文】
- (理由)当方、風邪気味にて、今夜の宴席は遠慮させていただきます。
- (理由)リフレッシュ休暇後の今日からは、体調万全にて仕事に臨めます。
- (原因)昨年は盲腸にて1週間入院しました。
- (原因)山手通り渋滞にて、現地到着30分遅れます。
「にて」と類義語「で」
「にて」と同じ〈格助詞〉の仲間に「で」があります。「で」は「にて」の略語で、「にて」よりもカジュアルに使用されます。
- 結婚式は「明治記念館」にて、滞りなくとり行われました。
- 結婚式は「明治記念館」で、滞りなくとり行われました。
後者よりも前者のほうが、ややかしこまった表現なのがおわかりいただけるでしょうか。同義の格助詞でも、ニュアンスや文章の印象に大きく差が出ますね。
「にて」と類義語「おいて」
文章の中での役割は、「にて」も「に、おいて」も変わることがなく、「おいて」は主に場所・時間(年齢)・事柄の3つの要素を文章の中で表す働きをします。
【場所を表す】
- 今年の体育祭は、「総合運動場」にて開催されます。
- 今年の体育祭は、「総合運動場」において開催されます。
【年齢を表す】
- 18歳にて渡米後、二度と日本の土を踏むことがなかった。
- 18歳において渡米後、二度と日本の土を踏むことがなかった。
【事柄を表す】
- このマンションはテンキーにて暗証番号を入力してください。
- このマンションはテンキーにおいて暗証番号を入力してください。
「において」は、普段、会話に用いられる機会は少なく、古来、読物によく見られます。現代においては、評論文などで論旨を述べる際に使われる語です。