「バーター」とは
「バーター」には、語源の違う二つの意味が存在します。
- 英語の「barter」を語源とする「物々交換」という意味
- 日本語の「束」を語源とする「セット出演」という意味
それぞれの意味や使い方について、次の項からご説明します。
「バーター」①物々交換
「バーター」の意味
日本語の「バーター」は「物々交換」の意味です。物品に限らず、人材やサービス(能力・スキルを含む)の交換に対しても使うことができ、その場合は「交換条件・交渉条件」といったニュアンスを含みます。
「バーター」の語源
「バーター」の語源は英語の「barter」です。「交易する」という意味の動詞であり、「物々交換」を意味する名詞でもあります。
「バーター」の使い方
- 刑務所では煙草とバーターするために靴下などの必需品まで手放した。
- そちらの人員を貸してくれないか?バーターで、来月はそちらに人を出すから。
- 僕の作業と君の作業をバーターしよう。その方が得意分野を活かせるだろう?
「バーター取引」
バーター取引は、商談などにおいて、金銭を介さずに物々交換や交換条件によって交渉を進めること。貨幣制度が浸透する前からある、因襲的な取引方法です。バーター制、バーターシステムとも呼ばれます。
「次は君の都合を優先するから、今回だけシフトを代わってくれ」という個人間の相談も、「御社のウォーターサーバーを全社に入れますので、弊社のパソコン保守サービスを利用してくれませんか?」という企業間の交渉も、バーター取引の範疇です。
「バーター貿易」
バーター貿易は、国家間で行うバーター取引のこと。一定期間、2国間の取引を均衡させることで、為替による差額決済を省略する取引です。求償貿易(きゅうしょうぼうえき)とも呼ばれます。
バーター貿易が広く用いられたのは世界恐慌の頃です。世界的に経済が混乱していたため、為替レートを除外した貿易システムが必要でした。第二次世界大戦以降も、外貨が不足している発展途上国との交易などにおいてバーター貿易が行われています。
評価経済
近年、評価経済という言葉を聞く機会が増えてきました。評価経済は、貨幣を介して物・サービスを交換する貨幣経済に対する考え方です。
評価経済は「信用や評価」を介して、貨幣・物・サービスを交換し合う経済形態で、貨幣が不要になるわけではありません。しかし、貨幣を介さないという点では、バーター取引の延長と言えるでしょう。
信用や評価の指標はさまざまですが、身近な例としては、フリマアプリのユーザ評価、インフルエンサービジネスにおけるSNSのフォロワ数などが挙げられます。
裏取引
政治の世界においてもバーターは行われていますが、良い意味ではないので「裏取引」と呼ばれています。例えば、首脳会議が膠着状態に陥った時などに、政治関係を円滑にする目的で、相手の望む物を差し出して交渉するのが政治におけるバーターです。
「バーター」②セット出演
「バーター」の意味
「バーター」とは「セット出演」のことで、バーター出演とも呼ばれます。バーターには、次のような例が挙げられます。
- ドラマや映画などで、メインキャラクタを演じる俳優と同じ所属事務所の若手俳優を出演させてもらう。
- バラエティ番組でMCやレギュラー出演者と同じ所属事務所の若手タレントを出演させてもらう。
バーターは、芸能事務所や若手芸能人にとっては顔見せやプロモーション、製作サイドにとっては人材発掘などの意味もあるので、芸能界の慣習として行われています。
「バーター」の語源
芸能関係の業界用語で「束(たば)」を逆さから読んだのが「バーター」の語源。バブル期に流行した「ザギンでシースー(銀座で寿司)」「ワイハ(ハワイ)」のような逆さ読みの言葉と同じ成り立ちです。
「バーター」の使い方
- バーターで出演させた新人俳優が実にいい芝居をした。
- いつまでもバーター出演を自虐ネタにしていないで、一人前になってほしい。
「抱き合わせ商法」
抱き合わせ商法とは、不人気商品と入手困難な人気商品をセット販売することです。消費者にとっては、人気商品を入手できる代わりに、不人気商品も同時に買わなくてはならないという不利益があります。
日本においては、2つの商品が密接にかかわっている場合(例:レンタカーと保険)を除いて、以下の通り、不当な方法とされています。
- 不公正な取引方法の一般指定(10項)に指定
- 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)第19条違反