「慮る」とは
「慮る」の意味
「慮る(おもんぱかる)」とは「周囲の状況などをよくよく考える」「思いめぐらす」という意味の動詞です。「おもいはかる」が転じた言葉で、「おもんばかる」とも言われます。
「慮」という漢字
「慮」という漢字は、考えを巡らすという意味の「虍(とらかんむり)」と、心臓の象形である「思」で構成されおり、「心を巡らせる・深く考える」ことを表しています。
音読みでは「リョ」、訓読みでは「おもんぱか(る)」と読みます。「思い巡らす・思い巡らせた考え」「くわだてる・くわだて」という意味です。
「慮る」の使い方・類語
「慮る」が用いられるのは、多く、「〜を慮る」「〜を慮った」「〜を慮って」といった形です。
思いを巡らせる対象が、人や人の気持ちなどである場合にも、状態や境遇などである場合にも使われるので、それぞれの使い方と類語を合わせてご説明します。
人や人の気持ちなどに対して
「娘もようやく人の心を慮ることを覚えてきた。」
「彼を慮った上での措置だった。」
「彼女の心情を慮ってそっとしておいた」
人や人の心に思いを巡らせる、つまり人に心を向ける・人の気持ちを汲むという場合、次のような言葉で「慮る」を言い換えることができます。
【類語】
- 気を配る:方々に注意を払う。
- 気遣う:案ずる。あれこれ心配する。
- 顧慮する(こりょする):深く考えて、気にかける。気を配る。
- 思慮する(しりょする):いろいろと慎重に考える。
- 心中を察する:気持ちを察して同情する。
- 忖度する(そんたくする):他人の気持ちをおしはかる。推察する。
「斟酌する(しんしゃくする)」にはいろいろな意味がありますが、「相手の事情・心情などをくみとる」という意味においては、「慮る」に近い言葉と言えます。
状態や境遇に対して
「彼には母の病状を慮る余裕がなかった。」
「彼がまた嘘をついているのかと慮ったが、そうでもないようだ。」
「万が一のことを慮って、次善策を用意した。」
状態や境遇などに対して思いを巡らせる、つまり考えに含める・気にかけるという意味で用いられる「慮る」を言い換える言葉には、次のような言葉が挙げられます。
【類語】
- 考慮に入れる:様々なことに思い巡らせて考える際に、その要素のひとつに含める。
- 勘案する(かんあんする):あれこれと考え合わせる。
- 念頭に置く:常に考えている。心にかける。
- 視野に入れる:検討する際に、ある物事も考えに含める。
- 留意する:注意する。ある物事を心をとどめて気を配る。
「慮」を含む四字熟語
「思慮分別」
「思慮分別(しりょふんべつ)」は、慎重に考えて物事を判断することを指す言葉。「思慮」は注意深く考えること、「分別」は道理をわきまえた判断という意味です。
「熟慮断行(じゅくりょだんこう)」の類語で、「思慮分別のある行動を求める」のように用いられます。
「深謀遠慮」
「深謀遠慮(しんぼうえんりょ)」は、深いはかりごとやはるか先のことまで深く考えて計画を立てるという意味。「遠慮深謀」「遠謀深慮」「深慮遠謀」も同義です。
「深謀」は深く考えられた計画のこと、「遠慮」は遠い先のことをしっかりと考えることという意味です。「深謀遠慮から出た最善策」のように用いられます。
「焦心苦慮」
「焦心苦慮(しょうしんくりょ)」は、心を痛めて、あれこれ思いをめぐらし悩むことを指す言葉です。「焦心」は悩み苦しむこと、「苦慮」は色々なことを心配して悩むことという意味。「彼らの焦心苦慮を察する」のように用いられます。
「遠慮会釈」
「遠慮会釈(えんりょえしゃく)」とは、 慎みや礼儀を指す言葉で、「会釈遠慮」も同じ意味。「遠慮」は控えめにすること、「会釈」はおじぎをして挨拶するということから、他人を思いやることを指します。
多くは、「遠慮会釈なく注文をつけた」のように否定の形で、強引すぎることを批判するときに使う言葉です。
「千慮一得」
「千慮一得(せんりょいっとく)」は、中国の故事「智者も千慮に一失有り」に由来する言葉で、愚賢い人でも多くの考えの中には一つくらい間違いや失敗があるという意味です。
「千慮」はたくさんの考え、「一失」は一回の失敗のこと。「君を責めたりしない。千慮の一失ということだ」のように使われます。