「アリア」とは?
「アリア」の意味
「アリア」("Aria")とはイタリア語で、オペラ(歌劇)、オラトリオ(宗教音楽)、カンタータ(バロック時代の声楽曲)などの中で、特定の人物が独唱する曲を指し、日本語では「詠唱」と訳されています。
日本人にとっては、キリスト教系の宗教音楽よりは、オペラなどの劇中で登場人物がソロパートを歌うイメージが強いかもしれません。
「アリア」は、登場人物が強く心が動かされた場面や、物語の進行に大きく関わる場面で歌われます。台詞を言う代わりに歌で表現する考えると分かりやすいでしょう。
アリアでは、登場人物のそれぞれの特徴を表す旋律が使われます。恋する男女なら甘い雰囲気、悪巧みをする人であれば不穏な雰囲気。誘惑しようとする場合は、美しく甘い雰囲気の中にも暗い響きの音を入れて表現する場合もあるでしょう。
同じメロディでも、うれしさや楽しさを表すには長調、悲しみや憎しみには短調と変化することもあります。
「アリア」の 使い方
- 今回の公演の彼女が歌うアリアは特に素晴らしかった。
- 音楽学校の裏を通ったら美しいアリアが聞こえてきた。
「アリア」の代表的な種類
「アリア・カンタービレ」
「アリア・カンタービレ」は、叙情的に美しく表現して歌うアリアという意味です。登場人物が自身の心の動きを美しい歌声で表現するアリアといった意味と考えると良いでしょう。曲自体は短くても、話の展開で重要な意味を持つ物もあります。
「アリア・ディ・ブラヴーラ」
技巧的なアリアという意味です。歌詞や物語の筋に直接関係ないのですが、歌手の聞かせどころとなります。技術的に非常に難しいアリアで、負担がかかって喉をつぶす恐れがあるからという理由から、このアリアを歌う役を避ける歌手も多いです。
代表的なのは、モーツァルト作曲の『魔笛』に含まれる「夜の女王のアリア」です。第1幕の「ああ、恐れおののかなくてもよいのです、わが子よ!」と、第2幕の「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」で、「夜の女王」役のソプラノ歌手によって歌われます。
コロラトゥーラと呼ばれる鈴の音が鳴るような装飾音を、非常に高い声で出すのが特徴です。特に第2幕の方は、女王が夫を殺された恨みの感情を込めて歌う有名なアリアです。
「アリア・パルランテ」
「アリア・パルランテ」は、台詞を歌で表したり、曲の中に会話のように語りかける歌を挟み込んだりした形式のものをいいます。よく似ているものに「レシタティーヴォ」がありますが、こちらは主に「アリア」の前で状況を説明するような形で歌われます。
「アリア・パルランテ」の例を挙げるとすれば、ヴェルディ作曲の『椿姫』冒頭の部分です。ヒロインの娼婦ヴィオレッタと若い貴族のアルフレードが、パーティ会場で引きあわせられる場面で使われています。
器楽曲の場合の「アリア」
オペラなどの歌ではなく、器楽曲のソロ演奏を「アリア」と呼ぶ場合もあります。「アリア」のように、歌うような美しいメロディで人を引きつける所があることからつけられたと言われています。
代表的な器楽曲は、バイオリンのソロ曲としても有名なバッハの「G線上のアリア」(「管弦楽組曲第3番ニ長調」第2曲)です。
バイオリンのコンサートの小曲として、アンコールなどでも演奏される曲で、バイオリンの最も低音の弦であるG線を使って演奏されることからこの名前がつけられました。
日本に馴染みが深い「アリア」
誰も寝てはならぬ
「誰も寝てはならぬ」は、プッチーニが作曲した『トゥーランドット』の最終幕の冒頭で歌われるアリアで、コーヒーのCMやフィギュアスケートの演技でおなじみの曲です。
名を秘めた王子(カラフ)がトゥーランドット姫の謎かけの勝負に勝ち、自分の名前が夜明けまでに分からなかったら結婚すると約束させます。姫は彼の名前を探るため、誰も寝てはならぬと自国民にお触れを出しました。
そのお触れを聞いた王子が姫との結婚を勝ち取ったと確信し、勝利に酔う心情を託して高らかに歌い上げるアリアです。
ある晴れた日に
「ある晴れた日に」はプッチーニ作曲の『蝶々夫人』(マダム・バタフライ)の中の一曲で、フィギュアスケートで女子選手が使うこともあります。『蝶々夫人』は、日本の長崎を舞台に、現地妻の蝶々さんの悲恋を描いたオペラなのでご存知の方も多いかもしれません。
「ある晴れた日」は第2幕の冒頭で、蝶々夫人役のソプラノ歌手に歌われるアリアです。アメリカ人の士官ピンカートンと結婚後、3年の月日が経ってもアメリカから戻ってこないピンカートンのことを思う内容です。
召使いが騙されているのではと心配しているのを、蝶々さんがたしなめて、きっと長崎の地に戻ってくると信じて愛情を込めて歌うアリアで、最終幕の悲しみをより際立たせる曲です。