「背徳的」とは?意味や使い方をご紹介

「背徳的」の意味は、簡単に言えば、一般的な約束事から外れていることです。俗用的な表現では、悪いとは分かっているのにのめり込んでしまう後ろめたい感情を込めて使う場合もあります。ここでは、「背徳的」の意味や使い方を、過去の芸術作品やその評価を交えてご紹介します。

目次

  1. 「背徳的」の意味
  2. 「背徳的」の使い方
  3. 「背徳的」と言われた作品

「背徳的」の意味

「背徳的」(はいとくてき)とは、その時代の道徳的(善悪をわきまえて人々が守るべきとされる物事や決まり)な物事を否定して、あえて規範や社会通念にそぐわない行動を取ることです。

「背徳」は道徳に背く(そむく:反する)こと、「的」は前の言葉を受けて「~のような様子である」ことをいいます。

「背徳的」の使い方

「背徳的」は、性的に良からぬこと、乱れていて不健全であること、暴力的であること、差別に繋がる内容など世間で問題視され、一般的な考えから逸脱していると非難する時に使われます。自虐的に後ろめたい感情を込めて使う場合もあります。

【例文】

  • 背徳的な内容の映画なので、小さい子供には見せられない。
  • 背徳的なポスターだと批判され、公共施設の掲示板から外されていた。

「背徳的」の俗用的な表現

正式な使い方とは認められていませんが、文学的な表現で「背徳的な恋」と使う場合があります。これは「世間一般で認められない不道徳な恋愛」のことで、多くの場合、不倫による恋愛関係を暗示しています。

他に「背徳的な味」「背徳的な食べ物」という使い方も見られます。これは、世間的に体に良くないとされるカロリーの高い物、脂っこい食べ物や濃い味付けなどのことをいいます。

食べ過ぎは良くない、もしくは、太ってしまうと分かっていても、美味しくて病みつきになっている後ろめたい感情を「背徳的」という言葉で表現しているわけですね。

【例文】

  • 背徳的な恋愛と責められても、当事者同士は燃え上がりやめる気配がない。
  • 焼きおにぎりにバターを足すのは背徳的な味でこたえられない。
  • ジューシーなハンバーグに脂身は必要だ。なんて背徳的な食べ物なんだろう。

「背徳的」と言われた作品

現在では、独創性や表現力の高さ、音楽的な素晴らしさから高い評価を受けていますが、発表された当時は「背徳的」と多くの人から批判を受けた戯曲やオペラなどの作品をご紹介します。

戯曲『サロメ』

『サロメ』は、退廃的な作風で有名なオスカー・ワイルド(オスカー・フィンガル・オフラハティ・ウィルス・ワイルド:Oscar Fingal O'Flahertie Wills Wilde)作の戯曲です。新約聖書に登場するサロメという名の若い王女のエピソードを元に作られました。

サロメは聖書の中で、王妃である母の悪口を言った預言者に復讐するため、継父の王に預言者の首を求める少女とされています。

サロメは「預言者の首を切らせる」という衝撃的なエピソードによって、オスカー・ワイルドから聖書の中の健気な少女とは違うイメージを与えられます。

戯曲の中のサロメは預言者への復讐のために首を切らせ、生首に「自分の物になった」と口づけをする、邪な思いに取り憑かれた怖ろしい怪物に変貌を遂げているのです。このような描写は当時の人には受け入れがたく、背徳的な物語として不評でした。

オペラ『サロメ』

数々のオペラを作曲したリヒャルト・ゲオルク・シュトラウス(Richard Georg Strauss)は、物議を醸し出したオスカー・ワイルドの戯曲を元にオペラ『サロメ』を作っています。

オペラでも公序良俗に反するような扇情的な歌詞や場面(サロメが預言者に執拗に好意を寄せて迫る、銀の皿に載せた生首、継父がサロメに色目を使うなど)が目立ちます。サロメの母や継父も愛欲に溺れたふしだらな人物として、劇中の歌詞などで強調されています。

中でも最も問題となったのは、第4場『7つのベールの踊り』です。継父に踊りを所望されたサロメが踊りながら次々にベールを脱ぎ捨て、最後には全裸になるという内容で、ウィーンでは上演禁止、ニューヨークでは1回で公演中止となり、強い非難を浴びました。

オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)作曲のオペラに『コジ・ファン・トゥッテ』(和訳:女はみんなこうしたもの)があります。

この作品は、婚約者を交換するふしだらな関係や、タイトルや内容が女性蔑視を助長すると不評を買いました。同時代の作曲家ベートーヴェンやワーグナーも「背徳的」と酷評しています。

あらすじは以下の通り。若い姉妹がそれぞれ下士官と婚約し、相手を裏切らないと誓います。「女は男を裏切るものだ」と煽られ、下士官達は彼女達が貞操を守るか確かめることに。外国人に変装し、姉の婚約者は妹を、妹の婚約者は姉を誘惑して試してみます。

最初は姉妹は相手にしなかったものの、後には誘惑に乗ってしまいます。結局裏切りがばれてから慌てふためく姉妹を許し、下士官達は寛大にも仲直りして元の関係に戻るという結末で締めくくられています。


人気の記事

人気のあるまとめランキング

新着一覧

最近公開されたまとめ