「名状しがたい」とは?意味や使い方をご紹介

「名状しがたい」。日本語のはずなのにある特定の作者の、それも外国の小説の訳語としての知名度が高いという、不思議な言葉です。近年ではその外国小説の世界観をベースにしたライトノベルから生まれた派生表現も生まれています。そんな「名状しがたい」について紹介します。

目次

  1. 「名状しがたい」の意味
  2. 「名状しがたい」の使用例
  3. 「名状しがたい」の派生表現
  4. 「名状しがたい」のまとめ

「名状しがたい」の意味

「名状しがたい」は、「説明できない、言葉にできない、表現できない」を意味する言葉です。

「名状」は、「めいじょう」と読み、「状況や様子などを言葉で表現すること」を意味します。これに「~することが難しい」を意味する「~しがたい」がついた表現ですね。

「名状しがたい」の使用例

「名状しがたい」の使い方としては、「名状しがたい○○」「○○については名状しがたい」といった形(”○○”は名詞や代名詞)が一般的です。

そして、この語が印象的な形で使用されているのが、『The Unnameable(名状しがたいもの)』をはじめとしたハワード・フィリップス・ラヴクラフトの小説の日本語訳です。
 

「いや──あんなものであるものか。いたるところにいたよ──ゼラチン状だった──ねばねばしていたんだ──それなのに、形はあって、記憶にも残らないおびただしい恐ろしい形をしていた。目があった──傷のある目が。窖だ──大渦巻だ──最も忌むべきものだよ。カーター、あれは名状しがたいものだったんだ」

ー『名状しがたいもの』H・P・ラヴクラフト作、大瀧啓裕訳

名状しがたい=総括できない

上の引用から、「名状しがたい」には「部分部分の印象を言葉にすることはできても、’ではそれはどういうものか’、’何に似ているか’といった総括ができない」というニュアンスがあることがわかりますね。

「あれは信号機だ」「あれはトカゲに似ている」など、はっきり名指すことができるものは「名状しがたい」とは言えません。今ある言葉で状況を表現できない「何か」が、「名状しがたいもの」です。

例文

  • そのとき私の前を横切ったのは、およそこの世のものとは思えない、名状しがたい生き物だった。
  • 台風が過ぎ去ったあと、見慣れた町は名状しがたい被害を受けていた。

「名状しがたい」の派生表現

「名状しがたい」は、近年ではその「不思議さ」「奇怪さ」「正体がわからない感じ」を逆手にとり、「笑い」を目的とした表現としても使われるようにもなっています。

特に有名なのが、逢空万太氏によるライトノベル『這いよれ!ニャル子さん』に登場する「名状しがたい○○のようなもの」という言い回しです。

『這いよれ!ニャル子さん』

『這いよれ!ニャル子さん』では、ヒロインであるニャル子の持つ武器が「名状しがたいバールのようなもの」と呼ばれる、外観や鈍器感がまさにバールそのものといった形のものです。

「バールのようなもの」と形容した時点ですでに「名状している」にもかかわらず、敢えて「名状しがたい」と冠していることが、いかにもツッコミ待ちといった空気を醸しています。

この『這いよれ!ニャル子さん』の世界観は前述のラヴクラフトの創作である『クトゥルー(クトゥルフ)神話』をベースにしており、「名状しがたい」についても原作におけるニュアンスを理解した上で使われています。

「名状しがたい」のまとめ

「名状しがたい」、「名状しがたい○○のようなもの」、元が小説的表現ということもあり、現在では一般的な国語表現というよりは、ネットスラングやサブカル方面の定型表現として見かけることが多いようです。

ラヴクラフトの小説や、派生したライトノベル等を読むことで、「名状しがたい」のより細かなニュアンスや空気を掴めるかもしれませんね。

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