「捨てる」とは?
「捨てる」の意味
「捨てる(すてる)」には、主に、次のような意味があります。
- 自分の手元から離す。自ら手放す。
- 関係を断ち切る。執着を断って顧みない。
- 放置する。放っておく。
- 投げ出す。犠牲にする。
「捨てる」の使い方
- 「着なくなった服を捨てる。」
- 「恋人を捨てて、故郷を出た。」「彼に対する疑いを捨てた。」
- 「老いた母を捨てておけない。」
- 「身を捨てて子供をかばった。」
「捨てる」の類語
「捨てる」の類語には、意味ごとに次のような言葉があります
「捨てる」の類語:手放す
- 打ち捨てる
- 投げ捨てる
- 除く
- 放棄
- ほうる/放り出す
- 廃する/廃棄
「捨てる」の類語:関係を断つ
- 断つ/絶つ
- 突き放す
- 振り捨てる
- 見限る
- 見捨てる
- 見放す
「捨てる」の類語:放っておく
- 遺棄する
- 放置する
「捨てる」の類語:犠牲にする
- 犠牲にする
- 捧げる
「捨てる」と「棄てる」
「捨」という漢字
「捨」という漢字は、音読みでは「シャ」、訓読みでは「す(てる)」、「ほどこ(す)」と読み、次のような意味を持っています。
- 不要なものを手放す。
- 放っておく。諦める。
- 施す。寺などに金品を寄付する。
「捨」は「扌(てへん)」と「舎(簡易な宿舎)」で構成されています。もともと「舎」は、軍隊が投宿したのちに、その宿をすてる(離れる)という意味でも使われていました。
そこで、「すてる」の意味を強調し、「舎(宿舎)」と区別するために、「てへん(扌)」をつけた「捨」という文字が作られ、「身から離す」、「放置しておく」というニュアンスが生まれました。
「捨」を含む言葉には、「捨象(しゃしょう)」、「取捨(しゅしゃ)」、「捨石(すていし)」、「喜捨(きしゃ)」などがあります。
「棄」という漢字
「棄」という漢字は、音読みでは「キ」、訓読みでは「す(てる)」と読み、次のような意味を持っています。
- ほうる。なげすてる。
- やめる。しりぞける。
「棄」という字は会意文字で、「子を流す」象形+「ゴミを押しのける道具」の象形+「両手」の象形から、「生まれた子をすてる様子」を表していました。そこから「うちすてる」というニュアンスが生まれ、上記の意味となったのです。
「棄」を含む言葉には、「棄却(ききゃく)」、「棄権(きけん)」、「遺棄(いき)」、「破棄(はき)」、「廃棄(はいき)」、「放棄(ほうき)」などがあります。
「捨てる」と「棄てる」の違い
「すてる」を辞書で引くと、「捨てる」と「棄てる」は併記されています。同じ意味で用いられますが、一般的には「捨てる」と表記されることが多いです。
敢えて使い分けるとすれば、それぞれの漢字の意味から、次のようにニュアンスを分けて使うと良いでしょう。
- 「捨てる」→「身から離す」、「自ら対象から離れる」、「放置する」
- 「棄てる」→「うちすてる」、「なげすてる」、「辞める」、「退ける」
「捨てる」を含むことわざ・慣用句
「捨て石になる」
「捨て石になる」は、「大きな目的を達成するために犠牲になること」の喩えとして用いられる言葉で、語源は囲碁用語の「捨て石」です。囲碁における「捨て石」とは、「作戦上、相手にわざと取らせるように打つ石」のことです。
「捨てる神あれば拾う神あり」
「捨てる神あれば拾う神あり」とは、「世の中はさまざまな人がいるので、見捨てる人も助けてくれる人もいるものだ」という意味で、「人に見限られたからといって、くよくよすることはないということ」を表しています。
「取捨選択」
「取捨選択(しゅしゃせんたく)」とは、「必要なものを選び取り、不要なものを捨てること」を意味する四字熟語です。「取捨」は、「必要なものを選んで、不要なものは捨てる(放っておく)こと」を指しています。
「小異を捨てて大同につく」
「小異を捨てて大同に就く(しょういをすててだいどうにつく)」とは、「細かな食い違いはあっても、大筋で一致しているところをとって協力しあう」という意味で、「小異を捨てて大同を取る」とも言われます。
「小さな違いはあっても、大体が同じであること」、「似たり寄ったり」を意味する故事成語、「大同小異(だいどうしょうい)」から派生した言葉です。
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」とは、「自分の命を犠牲にする覚悟があってこそ、初めて窮地を脱して物事を成就することができるということ」という意味です。
溺れているときはもがく程に深みにはまるもので、捨て身になって流れに身を任せれば、やがて浅瀬に立つことができることから生まれた言葉です。